10 ページ10
「お疲れ様でした！」
ようやく今日最後の"お疲れ様でした"を言い終わり、楽屋に戻る。
"うん。私も会いたい。"
君からの返信を思い出してはにやけそうになって、その度に手で口元を拭うようにしてなんとか乗り切ったスチール撮影。
あぁ、もう、とにかくはよAに会いたい。
楽屋に入るなり衣装を脱ぎ捨て、私服へと着替える。
最近買ったお気に入りのシャツのボタンを留める時間さえ惜しくて、下から4つ目まで留めたところで鞄を手にする。
「紫耀、俺これからAと会うから。」
目の前にいるのに言わないのも変かなと思い、紫耀にそう告げると、
「…門限までにちゃんとかえせよ。」
と威圧的な目で念を押される。
"かえせ" か…
だんだん紫耀の言う"かえせ"が、"帰せ"じゃなく"返せ"な気がして、思わずへの字口になってしまう。
「はいはい、わかってますー。じゃあお先に。」
帰しはするけど、返しはせんからな！
このシスコンアイドル！
なんて心の中で皮肉を言ってはみたけれど、
「おう、お疲れ。
…Aのことよろしくな。」
そう言う紫耀の目は強くて、優しくて、ちょっと寂しそうで…
数秒前に心の中で呟いた言葉をすぐに取り消したくなった。
うーん…なんやろ…
このくらいがえんかもしれへんって思ったんや。
自分のことを"望まれてない命"やなんて言ってた君には、このくらいがちょうどえんかもしれへん。
俺にも紫耀にも、とっことん大切に想われてる、このくらいが。
"今仕事終わった！30分くらいで着くと思う。"
俺、これからもっともっとAのこと大切にするから。
"お疲れ様。私もこれから向かうね。"
Aに生まれてきて良かったって思ってもらえるくらい。
"気をつけて来てな。"
"うん、廉君も。"
こんな何気ないやりとりでさえも極上の幸せに感じてしまうくらい。
そのくらいとっておきの、
とっておきの魔法をかけたるから。
な？
ほら、俺んとこおいで。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 153人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「平野紫耀」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：P | 作成日時：2018年9月19日 22時
