俺と彼奴とシンデレラ２ (ページ4)

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【紫耀】

「A…？」

玄関に入ると、扉越しにリビングの明かりが見えた。

Aがここにいることを感じ、ギュッと胸が締め付けられると同時に、物凄い緊張感に見舞われる。

何から話そう。

何て声をかければいい？

どうすればAは、俺に全てを曝け出してくれる？

「紫耀？」

必死で考えを巡らせていると、リビングの扉が開いて、Aが玄関に立ち尽くしたままの俺を不思議そうに見た。

「おかえり。どうしたの？」

何も言えずにいる俺に、そう言って優しく微笑む。

おかえりを言うのは俺の方だろ。

どうしたの？じゃねぇよ。
辛いことあったんだろ…そんな何でもないみたいなふりすんなって。

でも…そっか。

Aはまだ俺がもう全部知ってること、知らないんだもんな。

俺がさっき父さんと会ってたことなんて、何も知らないんだもんな。

だからこうやって、いつもみたいに笑ってんだろうな。

きっと今までずっと、こうやって無理してきたんだよな…

だったら、俺がまずやるべきことは決まってる。

「A、俺ずっと隠してた。」

「え…？」

「俺の両親が離婚した本当の理由。」

まずは俺が、自分自身を曝け出すこと。

「今までその場しのぎで誤魔化してきたけど、本当は…親父が不倫相手を妊娠させて出て行ったから…なんだ。」

自分を曝け出さなきゃ、いくら歩み寄っても触れられない。

強引にズカズカと踏み込むなんてことは、したくないんだ。

だって、Aの心は繊細で脆いだろ？
すぐに傷ついて壊れてしまうだろ？

「その時お腹にいたのが私…」

「うん…ずっと黙っててごめんな…」

「ううん…私の為に黙っててくれたんでしょ？

私が悲しまないように、辛い思いしなくていいように、黙っててくれたんでしょ？

その気持ち…私っ…誰よりもわかるっ…私も同じだから…」

変わらないなぁ。

昔から何かあるとこうやって泣いてた。

俺にゲームで負けたとか、まだ帰りたくないとか、

限られた時間しか一緒にいられなかったけど、Aがよく泣いてたのは覚えてる。

「A…」

その度に俺がこうやって、頭を撫でてたことも。

髪をぐしゃぐしゃにして怒られてたことも。

全部、全部、覚えてる。

Aと過ごす一瞬一瞬が、本当に大切だったから。