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紫耀が出て行って、君と二人きり。
俺は黙り込んだままやった。
苦い過去と今が頭の中でごちゃ混ぜになって、あの頃の俺と今現在の俺の境目がわからない。
「廉君…」
そんな俺に、君は起き上がって心配そうな目を向ける。
その視線でさえも、俺には愛おしい。
やけど今は真っ直ぐに君の目を見る自信がなくて、
俯いたまま君の腕を引っ張り、抱き寄せた。
「俺…カッコ悪…」
「そんなことないよ。」
「カッコ悪いって。紫耀に言われたこと、全部図星やった。情けないし、カッコ悪い…」
そもそも今こうやって、君に泣き言を言ってるこの状況がもうカッコ悪いやん。
俺何してんねやろ、ホンマ…
「カッコ悪いって言えることは、カッコいいことだと思うよ？」
でも…また、見つけた。
君と紫耀の似てるとこ。
そうやってどんな俺も受け入れて、いつでも明るい方へ導いてくれるとこ。
紫耀にそっくりや。
「なぁA。」
「ん？」
「好き。ホンマ好き。」
抱き締める腕の力を強めると、それに応えるかのように君も俺の背中に回した手に力を込める。
「病院行ったら、その後ちゃんと家で寝とくんやで？」
「うん。」
「ご飯ちゃんと食べて、薬も飲める？」
「大丈夫。」
「紫耀が仕事行ったからって掃除とかしたらアカンで？」
「そうだね。」
「携帯見たりせんと、ちゃんと休んどくんやで？」
「わかってます。」
一旦体を離して額をくっつけ合うと、繋がる視線。
クスッと笑う君の瞳に映っているのは、カッコ悪くても情けなくても、間違いなく俺や。
きっと、あの頃の俺と今の俺に境目なんてない。
あの頃の俺の延長線上に今の俺がおるだけ。
大丈夫。
一緒に歩んで来た仲間がおる。
その先で出会えた君がおる。
俺はちゃんと、
確実に前に進んで来たんや。
「それから、ちゃんと俺に連絡するんやで？」
「携帯見ずに休めって言ったのに？」
「俺は特別。」
見つめ合ってたら進めへんのや。
うん。
やから、足元確かめ合って、くだらん話しながら、
自分自身とお互いを大切にして、毎日を歩んでいこう。
「あ、あともう一つ。」
「何？」
「元気になったら、いっぱいキスしてええ？」
「…どうぞ。」
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作者名：P | 作成日時：2018年9月19日 22時
