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【紫耀】
父親と別れた後、何度もAに電話をかけたけれど、呼び出し音が鳴るだけで、
Aがどこで何をしているのか、もう日本に帰って来ているのかさえわからないまま、俺は力なく家に戻って来た。
疲れた。
予想だにしなかった父親とのやりとりは、心にも体にも相当堪えたみたいだ。
瞼が熱くてやけに重い。
ホテルから戻る車の中で、思いっきり泣いたせいだろう。
泣いたって事態は何も変わりはしないけど、泣いた後は少し気持ちが落ち着いたような気がする。
そんなことを思いながら乗ったエレベーター。
「え…廉…？」
扉の向こうにいたのは廉で、俺の顔を見るなり焦った様子でこう言った。
「お前…どうしたん…？」
廉、俺さ、今すげー辛いことがあったんだ。
俺の父親、本当に酷い奴でさ。また不倫して離婚したんだって。
それに俺…Aのことちっとも守れてなかったみたいなんだ…
情けねぇよ…
俺…悔しくてたまんねぇよ…
なんてこと、廉には言えない。
なんだろう。
なんだかんだ此奴の前では、
いつだってカッコつけてたいのかな、俺。
本当はこんなにカッコ悪いのに。
「お前こそどうしたんだよ…なんでいんの？」
泣いたのなんてすぐにわかるような目なんだろうけど、それでも精一杯いつも通りの俺を装う。
「俺は…A送りに」
「Aっ？！帰って来てんの？！」
だけど、Aが帰って来てることがわかって、そんなことはどうでも良くなった俺は、一目散に玄関へ走ろうとした。
そんな俺を慌てて呼び止めたかと思えば、
「いや…気にならへんのん…？なんで俺がA送ったか…とか…」
そんな当たり前のことを聞いてくる廉。
なんだ？
なんでこんなこと聞いてくるんだ？
俺にはさっぱりわからなくて、
「気になるに決まってんだろ。
でもとりあえず今はAに会いたいから帰る。次会ったら全部話せよ！」
当然のようにそう答えて、また足を進めたところで、
俺はふと気付いた。
まさに点と点が結びついたような、そんな感覚。
あぁ、そっか、廉だったんだって。
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作者名：P | 作成日時：2018年9月19日 22時
