俺と彼奴とシンデレラ２ (ページ1)

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「お前こそどうしたんだよ…なんでいんの？」

決めてる。

「俺は…」

もう、嘘はつかへん。

つきたくない。

「A送りに」

「Aっ？！帰って来てんの？！」

Aの名前を聞いた途端、紫耀は目を見開いて俺の言葉を遮った。

「うん…あっ、紫耀！ちょっと待って！」

俺が頷くと直ぐ様玄関へ走り出そうとする紫耀を、慌てて呼び止める。

「なにっ？」

なんか…何も聞かれへんのが不思議で…

カナダに帰ってたAを、なんで俺が家まで送ることになったんか聞かれへんのが引っかかって…

はよ全部何もかも打ち明けてまいたかったから。

「いや…気にならへんのん…？なんで俺がA送ったか…とか…」

言葉に詰まりながら恐る恐る聞く俺に対して、

紫耀ははっきりとした口調でこう答えた。

「気になるに決まってんだろ。

でもとりあえず今はAに会いたいから帰る。次会ったら全部話せよ！」

そしてまた玄関へ足を進めたかと思えば、突然振り返ってこう言った。

「廉！
俺、お前がいて良かったよ。
俺にもAにも、お前がいて良かったよ。」

「え…？」

「じゃあなっ！」

言葉の真意を理解できずにいる俺に、充血したままの目でニカッと笑って去って行く紫耀。

今日彼奴に何があったかはわからんけど、

きっと、彼奴はいろんなことを悟ってる。

でもな紫耀、

俺の台詞や、今のは。

俺、お前がおって良かったわ。

そう思いながら、彼奴が角を曲がるまでじっとその背中を見つめていた。

隣に並んでいるようで、俺はいつも彼奴を追いかけてた。

いつも彼奴の背中を必死で追いかけてきた。

昔から筋肉質な彼奴の背中。

沢山の期待や責任を背負ってきた、頑丈で大きな背中。

母親やA、俺たち仲間を支えてきた、温かくて広い背中。

俺をそのまま包み込んでくれる、お前のそんな背中が、

お前が、

俺は大好きや。

劣等感や嫉妬で見えなくなりがちだった核心を剥き出しにしてみれば、

本当に単純で簡単な気持ちでしかなくて、

その懐かしさと眩しさに思わず目頭が熱くなる。

一人で乗ったエレベーター。

俺はすぐに閉ボタンを押して、Ｔシャツの裾で目元を擦った。