▽アクロバット ページ11
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アクロバット。
昔はやってたけど、あの事故から一度もやってない。
『アクロなぁ...』
深「どうした？暗い顔して」
『ちょっと考え事してただけ〜』
あれは、思い出したくないくらい体が痛い出来事だったんだよ。
すごい音がして、骨全部折れたかと思ったくらい。
いや、それは盛りすぎだけどさ←
岩「Aってアクロバットできんの？」
このタイミングで聞かれると言葉が詰まる。
『うーん、今はやってないからわかんない。
...正確には、できなくなった』
その一言で空気が重くなるのがわかる。
『ちょっと水買ってきまーす』
ただその空間にいるのが嫌で、逃げ出すようにその場から離れた。
＊
自販機の目の前にきて、財布を持って来ていないことに気がつく。
もともと水を買うなんて、あの重たい空気から逃げ出す口実だった。
だけどメンバーに言ってきちゃったから戻りにくいなぁなんて思いながら、近くにある長椅子に座る。
ただ1人になりたくて、逃げてきた。
自分の弱さに改めて気がつく。
強くなったと思ったのにな。
溢れ出しそうな涙を頑張って引っ込ませる。
「A」
優しく名前を呼んでくれた方を向く。
そこにはいつもそばにいてくれる彼が。
『阿部ちゃん...』
阿「ほら、おいで」
同じ目線になるため、わざわざしゃがんで両手を広げてくれる彼。
阿「仕方ない」
そう言いながらギュッと抱きしめてくれる。
『なんで...』
阿「Aのことは見てるからね」
『こわ...』
阿「え、Aもでしょ」
無理に聞き出そうとしない彼の優しさに泣きそうになりつつ、ちょっと面白くて笑顔になる。
阿「戻る？」
『もうちょっと...』
阿「えー、俺戻りたいんだけど」
そんなのお構いなしに彼の肩に頭を預けるとぽんぽんと心地よいリズムで背中をたたいてくれるから睡魔が襲ってきた。
阿部ちゃん、寝かせる天才かも。
＊
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