19-7 〈続き〉 ページ44
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私がそのような表情をしていた原因は十中八九先刻の出来事だろう。あれは疲れたどころの騒ぎではない。神経をすり減らしたと言っても過言ではないほど怒涛の出来事だった。
「まあな……ちょっと面白い人と出会ったのだ」
「面白い人……？」
「誰だそれ？教えてくれ！」
「ああ、勿論良いとも」
私はAさんのことと先刻の出来事を話した。
苦無を避けられたこと、激しく戦ったこと、私の得意武器を当てられたことなど順を追って話した。
いつの間にか喧嘩をしていた2人も私の話に耳を傾けていた。
途中で口を挟むわけでもなく真剣に聞いていた彼らだったが、私が馬乗りになられたと言ったときの表情は存外面白かったな。
ああちなみに、彼女の異名のことは伏せておいた。だって直接本人から聞いた方が面白そうだろ？
それと彼らの感想は大体予想通りだった。
「仙蔵、そのAさんって人俺に紹介してくれないか？」
「俺もその人と勝負してぇ！！」
「仙蔵に勝つくらい強いならいけどんマラソンにもついてこられるだろうか！？なあ長次！」
「もそっ……」
紹介してくれと言う文次郎はどうせ会った瞬間手合わせを頼むつもりだろう。
留三郎も同様に勝負を仕掛けるな……本当お前ら似た物同士だと思う。
小平太の言う『いけどんマラソン』って裏々山まで行くやつか？……大丈夫じゃないか？知らないが。
長次に関しては……うん、特に何もない。
「紹介するのは構わないが、彼女が今どこにいるか私は知らん。どうせ明日集会が開かれるのだからそれまで我慢しろ」
「えー！！！」
我慢しろと言うと3名ほど文句を言ってきた。……お前ら子供じゃないんだからこれくらいのことで文句を言うな！！
「……仙蔵の言う通りだ。それにそろそろ食べ終わらないとまずい。おばちゃんを見てみろ……」
唯一文句を言わなかった長次の一言で、私達はおばちゃんの方をチラリと見た。おばちゃんの目はグイッと吊り上がり、今にも激怒しそうだ。
「しまった……！！話に夢中になりすぎた！！」
「お、お前ら！おばちゃんがキレる前にさっさと食うぞ！！」
私達は一斉にご飯をかき込んだ。
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