【忍たま】姉は弟になかなか会えない 3 (ページ39)

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「……伏木蔵？」

玄関で草履を履いていると愛しの弟に呼ばれた気がした。

だが彼がいるわけではない。会いたすぎる故の幻聴か？とうとうやばいかもしれない。

(確実に伏木蔵が足りない。門前に行ったら丁度帰ってきたところに出くわさないかな！？)

秀作に頼まれた箒の片付けを遂行するため、傘を差して外に出た。雨は降り始めよりはちょっとマシになったかもしれない。

「えーっと箒は〜っと、あーやっぱりびしょ濡れだ」

ぴったりと閉まった門に立てかけてあった箒は案の定びしょ濡れだった。さてどうしたものかと頭を抱える。

「このまましまったらカビるよな……えー干す？どこで？」

びしょ濡れの柄を持ち歩きながら考える。
だがぶっちゃけ持ちたくない。びしゃびしゃで気色悪い。何か拭くもの持ってくればよかった。

「んーよし、後のことは秀作に任せよう！！」

箒をしまっている倉庫の前で私は決めた。

元々秀作の仕事だったんだし後は任せても良いよね？面倒……いや良い案が浮かばなかったのだと、秀作の了承は得ていないが自己完結させた。きっと大丈夫だろう。

ということで適当だがわかりやすいところに箒をしまった私は事務室に戻るため来た道を辿った。
その途中、もしかしたらと淡い期待を抱きながら門の前を通る。

(……まあいないよね〜でももしかしてもしかすると？)

ついでに潜り戸を開けて外も確認する。が、伏木蔵どころか誰の気配も感じない。

(ですよね！！まあこんな雨の中誰が外出るんだって話よ……)

本当はここで伏木蔵の帰りを待っていたいが、生憎秀作のぶち撒けた書類の片付けを手伝わなければいけない。

名残惜しいが身を引っ込め潜り戸を閉めた。

“バシャバシャバシャバシャ”

それは潜り戸が完全に閉まった直後のこと。
誰かがぬかるんだ道を駆ける音が門の向こう側から聞こえた。

「まさか伏木蔵！？」

大慌てで私は再度潜り戸を開けた。

だけどそこにいたのはかわいいかわいい愛しの弟ではなく、びしょ濡れでハアハアと息を整えている見知らぬ青年だった。

私は思わずその人の爪先から頭のてっぺんまで観察してしまった。
濡れてるのはわかる。泥が跳ねてるのもわかる。だけど何で頭に葉っぱや枝がくっついてるの？どこ通ってきたわけ？

なんて疑問まみれの視線を浴びたその人は、息を整え終わるとゆっくりと言った。

「えっと……どちら様ですか？」

いやこっちのセリフだわ。