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つい先日、授業で火打ち石を初めて使った。
だが、石と火打ち金を何度ぶつけても上手く着火しない。何回も試したが上手くいかず、結局その日は火を見ることなく授業が終わった。
伏木蔵はそれが悔しかった。しかも次の授業で成功しないと補習が待ち受けている。
だから先輩である伊作にコツを聞こうと、委員会に火打ち石たちを持って行った。
そしてそれを部屋に置きに行くのが面倒だったので、そのまま薬草取りに持ってきたのだった。
「伊作先輩のコツを実践するチャンス!」
伏木蔵は伊作の言葉を思い出す。
『擦ることをイメージして火打ち金で火打ち石を強く叩くんだ』
その言葉に忠実に従った。するとカッと良い音と共に火花が散った。急いで息を吹きかけ空気を送る。
ほどなくして火種は立派な火へと変化した。成功だ。
「やったー!成功だぁ〜」
目の前の焚き火はパチパチと音を立てる。火傷をしない程度に近づくとじんわりとした暖かさが冷え切った身体を包む。
「ほっ……あ、そういえば僕怪我してたんだっけ」
一安心する伏木蔵だったが、擦り傷を負ったことを思い出した。チラリと見れば若干血が出ている。だがそんなに酷い怪我ではないようだ。
しかし、だからといって放っておくのは保健委員の彼には考えられないことだった。
「そうだ!さっきの薬草が使える!僕って幸運かも〜」
雨が降る前に積んだ薬草を懐から取り出す。
多少泥が付きよれてしまったが洗えば問題ないだろうと、薬草を持った手を洞窟から出し雨水で洗った。
そしてそれを患部にペタリ。これで止血はバッチリだ。
「よし、これで大丈夫。あとは雨が止むまでここで待って、その後伊作先輩を探しに行くぞ〜!」
慌てることなく治療を終えた伏木蔵は、ぼんやりと焚き火を見ながら雨が止むのを待った。
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