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雨脚は弱まることを知らなかった。
容赦なく小さな伏木蔵の身体を叩きつける。激痛とまではいかないがビシビシと絶え間なく当たるので痛い。加えて走りにくい。
それでも伏木蔵は懸命に走った。そして漸く洞窟が見えたときだった。
「ぅわっ!!!」
“ズシャァアアアアア”
ぬかるんだ地面に足を滑らせ伏木蔵は転んだ。しかも運悪く転んだ先は斜面だった。
急には止まれず、伏木蔵はそのままゴロゴロと斜面を滑り落ちていった。
幸いなことに、斜面はそれ程長くなく数秒もしない内に伏木蔵は止まった。
ただし身体のあっちこっちを打ったようで痛い。それに枝か何かに引っかけたのか所々服とその下の皮膚が擦り切れている。
「いったぁ……」
流石の伏木蔵も涙目だ。
だがこのままここにいても雨に体温を奪われるだけ。どうにか雨の当たらないところに行かなければ。
伏木蔵は痛い身体を引き摺りながら雨の当たらない場所を探した。
ザァーザァーと雨音が聞こえる。
伏木蔵はその音を洞窟の中から聞いていた。
斜面を滑り落ちた伏木蔵が見つけたのは、奥行きがなく彼ともう2人一年生が入れるほどの大きさしかない洞窟だった。というか、洞窟より何か動物の巣と言った方が良いかもしれない。だが特に何かがいるわけではなかった。
どんな場所であれ、雨を凌げることに変わりはないため伏木蔵はそこに急いで入った。
「はぁ……びしょ濡れだぁ……」
改めて自身の姿を確認したが濡れ鼠も良いところである。ポタポタと絶えず自身から水が滴り落ち地面に水溜まりを作る。ぎゅっと絞ればそれはまあすごい量が絞り出せた。
「火起こししなくちゃ……!」
近場の枯れ枝や葉を適当に集めて山積みにした。ここに火種を入れれば焚き火ができる。
だが伏木蔵は火種を持っていなかった。
それもそのはず。火縄銃が得意武器の者なら胴火を持っていてもおかしくないが、彼はまだ何を得意武器にするかも決まっていない一年生だ。持っていないのは当たり前である。
「どうしよう……あ、そういえば」
せっかく木があっても火種がなければどうすることもできない。
そう思った伏木蔵だったが何かを思い出した。そして籠とは別に背負っていた風呂敷の中を漁る。
するとそこには石と鋼鉄片が入っていた。
「あった!!」
それは火打ち石と火打ち金だった。
何故彼が今そんなものを持っているいるのか。
その答えは簡単。ただの偶然である。
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