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「私、夕飯時って伝言頼んだと思うのですが?」
「はい、仰る通りです。遅れてしまい申し訳ありませんでした……」
冒頭から謝罪ですまない。え、今何が起きているかって?
一言で言えば『鬼』に睨まれているかな。
その日、とあるくノ一は同僚の男に新しく特別講師という役職に就いた女を部屋に案内してほしいと頼まれた。彼女は夕飯時なら可能だと提案し、それは快く了承された。
仕事をしながらくノ一__山本シナは考える。遂に『同性の同僚が初めてできる』と。
シナにとって、この忍術学園で同僚と呼べる人はいるがそれはどれも異性、男だった。
別にそれが嫌というわけではない。寧ろ女だからといって差別されることもなく平等に扱ってくれる事は有難いと思っている。
偶に女同士の会話をしたくなるが、そのときは自分が受け持つくノ一教室の子と話せば良い。
だがしかし、やはり寂しいと思う気持ちもある。
いくら差別がないとは言え、男と女であることに変わりはない。些細なことでも考え方が違いストレスを抱えることだってある。
そんな時は誰かに愚痴を言いたくて仕方がない。
だがくノ一教室の彼女達は生徒だ。教師の立場である自分がそんな愚痴を言えるわけはない。こういうとき、同性の同僚がいればよかったのにと何度思ったことだろうか。
だからシナは、今回女性が同僚になるということを誰よりも嬉しく思っていた。
「鶴町Aちゃん、一体どんな子かしら?」
18歳の女の子でフリーの忍者。それで伏木蔵くんのお姉さん。
似ているのかしら?と、同僚に教えてもらった基本情報を思い返しながら想像を膨らませる。
「何にせよ仲良くなりたいわね!」
Aに会えることが待ち遠しくて仕方がないシナは、早く仕事を終わらせてしまおうと書類に目を向けた。
そして待ちに待った夕飯時。
少し早いかもしれないと思いつつシナは食堂にやって来た。だがそこで会ったのはAではなく一年生3人だった。
「こんばんは」
「山本シナ先生!こんばんは!」
ぴったり揃った挨拶に小さく笑みを零す。そしてAを探した。
すると、
「Aさんならまだですよ?」
「土井先生とお話があるんだって言っていました!」
「僕達も待っているんです!」
と自身が求めていた答えが返ってきた。
(来るのが早かったかしらね)
シナは椅子に座りながらそう思った。そして、彼らと話していればすぐ来るはずだと談笑しながら待つことにした。
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