女の事情 ページ8
蓮のメイクを終えて
一息ついていると
後輩のアシスタントが
ゾロゾロとこっちへ
向かってくるのが見えた。
「Aさん、アイドル雑誌に
行った理由知ってます?」
そう聞こえて、逃げようとした
足がピタッと止まった。
「年齢的にもう、女性誌には
向かないって判断されたらしいですよ」
そう言うと後輩の女の子たちは
面白可笑しそうに笑った。
「まぁうちのターゲット20代前半だから
そりゃ30手前のおばさんの意見よりは
もっと若い世代の意見が必要ですよね!」
「上層部も苦渋の決断だって。
あのキャリアでうちの花形降ろすって
なったら相当プライドも傷つきますもんね〜」
「アイドル雑誌なら
逆に同世代の未婚女子たちが喜びそうな
アイドルたちイメージしやすそうですもんね!」
「あの落ち方だけは
絶対に嫌〜。寿退社あるのみ!」
そう言いながら後輩達は
歩いていった。
分かってた。
分かってるつもりだった。
でも、実際目の前で言われると
ズシンと来るものがある。
「Aちゃ〜ん?」
ぱっと後ろを振り向くと居たのは蓮で。
「一緒に帰ろ?」
そう笑った。
「、、撮影終わったの?」
「うん。ふっかさんは
誰か待ってるみたいだったけど」
「、、あの可愛い彼女さんじゃない?」
「Aちゃんなんか怒ってる?」
そう言って私の顔を覗き込む蓮。
「別に怒ってない」
「怒ってるじゃん、その顔」
「怒ってないってば!」
思わず大きくなった声に
自分でも、はっとする。
「ごめん、蓮」
「ううん。
なんかあったんでしょ?」
俺ね、顔みただけでわかるよ。
なんて蓮は優しく微笑んだ。
「俺でいいなら話聞くよ?」
そう聞いてくれる蓮に
頑固な私の心はいとも簡単に開く。
日中あった出来事を告げれば
蓮は私の目の前で手を広げた。
「はい、おいで」
「え、なに?」
「知ってる?
人間って抱きしめられると
ストレスの30%は軽減されるんだって」
「なにそれ、、」
「Aちゃんが来ないなら
俺から行くけど?」
そう言って目の前の蓮は
私の方へ真っ直ぐ進んでくる。
ふわっと、蓮の香りに包まれると
ふと、気持ちが楽になる。
「Aちゃんは頑張ってるよ。
誰がなんて言おうと、頑張ってる」
そう言いながら私の頭を撫でる蓮。
私の目からは不思議と涙が流れた。
「蓮、」
「うん?」
「ありがとう。」
「ペットも悪くないでしょ?」
そう言う蓮の腕に包まれながら
私はそっと目を閉じた。
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作者名:あやぴ | 作成日時:2021年9月7日 3時