覆せない 06 ページ6
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｢うあー…ねむ。｣
周りに人がいないのを確認して大きな欠伸をひとつ。
カラオケから逃げるように帰ってきた私は、愛犬のぽちの散歩に付き合わされている。いつもはお兄ちゃんが行くんだけど、なんでも熱があるらしく。
｢ぽちぃ、もう帰ろう？｣
ぐいぐいとリードを引っ張るぽちは｢まだまだ足りない｣とでも言いたげだ。兄よ、毎日どんだけ散歩してるの。
まだ課題も残ってるのに…、
ふあ…、2回目の大きな欠伸をもらした刹那、リードが手を離れぽちが人影に向かって走っていく。
や、やばっ…！ぽちを急いで追いかける。ぽちはお世辞にも人懐っこいとはいえない性格だから、知らない人だったら本当にやばい。
リードに夢中で前を見ていなかった私は曲がり角を曲がった途端、とん、と誰かにぶつかる。
痛っ、…ていうか、この匂い。
鼻を掠めた覚えのある匂いに上げようとした顔が停止する。
｢お前、リード離すなよ。相手が俺じゃなかったらどうするの｣
｢…どうも、｣
｢…なんだよそれ｣
｢や、…触んないでっ｣
リードを受け取って伸びてきた手を振り払う。
なんで、どうして。
｢元彼に対する態度かよ、それに、俺はまだ認めてないから。Aがより戻したいって言うまでずっと待ってる｣
…どうして、瑞稀くんに会うの。
あれから学校でも会わないようにしてたのに、ぽちの馬鹿。
怒りの矛先がぽちに向かうくらい、この時の私は余裕がなかった。
覚えてるのは、息きれぎれで靴を脱いだ事くらい。
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作者名：蕎麦リアン
| 作成日時：2019年11月1日 20時
