覆せない 11 ページ11
．
｢いらっしゃいませ〜｣
我ながら緩いと思う。
私のバイト先のコンビニは駅前という事もあっていつもはそれなりに賑わっている…はず。
…今日は暇だけど。
でも、まだ目が腫れているから人が少ないのは正直言って助かる。
学校でも隠すのに必死だったもん、
｢…Aさん、暇です｣
｢やっぱ金指くんもそう思う？珍しいよね、いつもは忙しいのに｣
｢この感じだと早上がりありそうですね｣
店内はがらんとしていて、私と後輩の金指くん、それとずーっとトイレにこもっているお客さんだけだ。
お客さん、かれこれ20分はいる気がする…まあ他にはいないからいいんだけど。
でも、ちょっとだけ心配だったり。
｢暇なんでトイレ掃除してきますね、レジお願いします｣
｢レジ任されるのは全然いいんだけど、トイレお客さんいるよ｣
20分くらい…と付け足すと、キリッとした眉が真ん中に寄る。
｢それ、大丈夫なんですか？中で倒れてたりとか…ちょっと声掛けてみます｣
｢うん、お願い｣
物凄く頼れる後輩金指くん、
最初はかたかった表情も最近は解れてきて、可愛い笑顔を見せてくれるまでになった。
手袋をして奥のトイレに向かった金指くんを見送って5分、
どたばたと煩い足音が聞こえた後、レジに梅干し味のグミとオレンジジュースが置かれた。
｢Tポイントカードはお持ちでしょうか？｣
｢お、お願いします…｣
ありがとうございます、そう言ってカードを受け取る為に顔を見る。
…あれ、このひと。
．
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作者名：蕎麦リアン
| 作成日時：2019年11月1日 20時
