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40.それは誤解だ!(4) ページ46

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 赤坂家の居間に場所を変え、私たちは三人向かい合っていた。
 理子ちゃんと早川さんの前には理子ちゃんのお父さん特製のパエリアが置かれている。
 私の分はあっても食べられないし、そもそも理子ちゃんのお父さんには私は見えていないので用意されるわけもないのだが、早川さんが不思議そうな目で見るので、「先に済ませた」と笑っておいた。

「すみません、勘違いして」

 沈黙を破ったのは早川さんだった。
 ちょっと恥ずかしそうな顔で上目遣いに私たちを窺っている。

「いいのよホント、気にしないで」
「伊藤君はいい奴だから、女の子侍らすような人じゃないよ」
「そうですよね。伊藤さんに限ってそんな……」

 話を聞くに、どうやら早川さんは片思いする伊藤君が最低男かもしれないと一日ずっとやきもきしていたらしい。
 そしてその原因が、私たちが彼を誘惑したせいではと。
 それで我慢できなくなって伊藤君ではなく侍っていた側の女二人に勝負を仕掛けた。
 疑惑を持ってから一日でここまでくる行動力がすごい。

「でも誤解が解けてよかったわ。ふふ、伊藤ちゃんたら、こんな可愛い子に想われてるなんて」
「可愛いなんてそんな……。理子さんは彼氏いないんですか?」
「え?」

 さっきまでとは対照的に、誤解が解けて上機嫌になった早川さんが理子ちゃんに質問を投げる。
 その眼はきらきら輝いていて、スケバンといえども女の子、やはり恋バナは好きらしい。

「好きな人とか」
「い、いないわよ!」
「ふーん? ……怪しいなぁ」
「そんな事!」
「Aさんは?」
「私? 私は恋とかそういうのよく分かんないなぁ」

 理子ちゃんに向いていた話の矛先が突然こちらに向けられる。
 いつの間にか変わった呼び名に喜ぶ間もなく、私はそれに苦笑いで答えた。
 なにせ既に死んでいる身だ。
 恋をしたところで実るはずもないし、するだけ無駄である。
 ちらりと視界に入った理子ちゃんがどこか寂しいような悲しいような目で見ていたけれど、それには気付かないふりをして。
 私と理子ちゃんの間に流れる妙な空気を感じ取ったのか早川さんが私たちの間で視線を彷徨わせていたが、気を使ってくれたらしく努めて明るい声で口を開いた。

「と、ところでこのパエリア不味いっすね!」
「……そうね」
「パエリアってそもそもこういうのだっけ?」

 残念ながらべちゃべちゃのパエリアもどきは大不評である。



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玉屋(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます、励みになります! (2019年3月2日 10時) (レス) id: 038d2716d2 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新、楽しみにしています! (2019年3月2日 2時) (レス) id: fd73c1c988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:玉屋 | 作成日時:2019年2月5日 9時

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