28.ボーダーラインの向こう側(11) ページ34
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「今日学校を出るとき、あの場には三橋と理子ちゃんと佐川、それに俺がいた。Aちゃん、今までは校門から外に出られなかったんだよね? それが俺たちの内誰かが一緒にいる事で外に出られるようなった、とか。だとしたら、佐川は兎も角俺たち三人なら誰が一緒でも条件は同じなんじゃないか?」
って、思ったんだけど。
そう言いながらこちらの顔色を窺うように伊藤君が視線を投げてくる。
その考察をポカンとした顔で聞いていた私と対照的に、三橋君はふむと一つ頷いて答えた。
「その線、あり得るな。つまり、最初は俺との距離が一定以上離れたから引っ張られて、その次は俺は離れたけど伊藤があの場にいたから引っ張られずに済んだ……、理子はあん時元々ちょっと離れたところにいたからな、アイツの方が早く距離が離れたってことか」
「まぁあくまで想像だけど。そんなに的外れでもないんじゃねぇか」
三橋君と伊藤君の間ではそれが結論ということで落ち着いたらしかった。
一方の私はいまいち彼らの説明を飲み込み切れず混乱した頭と戦っていた。
「あーまぁつまり、これからは学校以外のとこにも行けるぞってことだ。よかったな、修学旅行も行けそうだぞ」
「! 修学旅行……」
その単語に耳が反応する。
正直よく分からん。
よく分からんが、その一言は私の頭の中から小難しい考えを取り払って『嬉しい』一色にするのに十分すぎる言葉だった。
二人の話も落ち着き私が浮き上がった気持ちを噛みしめていると、今井さんがぽつりと零すように呟いた。
「なんかすまなかったなぁ、こんなおおごとになっちまって。Aさんも、巻き込んでしまって申し訳ない」
そういってかくんと頭を垂れる今井さん。
そんな彼によく分からない掛け声を上げながら思いっきり手刀を繰り出したのは、言わずもがな三橋君だった。
「そうだよお前のせいだよなに開久に喧嘩売ってんだこのバカチンがぁ! つーかなにどさくさに紛れて名前で呼んでんだお前はよ!」
「お前だって! そういや人を川に突き落としやがって!」
「てめえがトロいからだろうが!」
「なんだとォ! Aさん聞きましたか今の台詞! こんな卑怯者が一緒ではあなたの身が危ない、でも! 安心してください、この今井がしっかりAさんを守ってみせま」
「でぇい! 気安く触んな! ほれ、さっさとズラかるぞ!」
「やーむりむりむりむり」
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玉屋(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます、励みになります! (2019年3月2日 10時) (レス) id: 038d2716d2 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新、楽しみにしています! (2019年3月2日 2時) (レス) id: fd73c1c988 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉屋 | 作成日時:2019年2月5日 9時