27.ボーダーラインの向こう側(10) ページ33
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「ここなら外から見えないし、しばらく落ち着けるかな……」
薄暗い倉庫はだいぶ埃っぽいが、あのまま外で座り込んでいるよりはましだろう。
あそこはひらけ過ぎていて敵の増援が来ても隠れようがない。
今井さんの肩を借りてここまで来た伊藤君は、入ったところの壁に寄り掛かるとそのままそこから動けなくなってしまった。
「思ったよりやべぇな。力入んないわ」
そういう伊藤君の表情は苦々しく、彼を運んできた今井さんも伊藤君の横の壁に倒れ掛かるように腰を落とした。
とはいえ、ここは取り敢えずの避難場所ではあるがさっきの広場からさして離れてもいないしあまり長居はできないだろう。
どうしたものかと三人寄って思案していると、私たちが入ってきたのと同じ方から人が駆け込んできた。
「！ 三橋君！」
私の声でこちらに気付いた三橋君が駆け寄ってくる。
その顔には安堵と焦りが見て取れた。
「おい、こんなとこでなにしてんだよ！ あの大ボスゴリラが来る前にさっさとズラかるぞ」
「や、もう動けねぇ」
「京子ちゃんと明美ちゃんは」
「逃がすに決まってんだろ、あのゴリラが来んだからよ」
それを聞いて「そうか」と短く頷いた三橋君は、次の瞬間私の方にぐりんと顔を向けた。
「で？！ お前はなんであそこに来たんだコラ！」
「ひぃ！」
「理子と帰れっつったよなァ？！」
「言った！ ごめんなさい！ でもそうしようと思って理子ちゃんの方見たらもういなかったし！」
「だったら一人で帰れよ！」
「いやぁ、それがね……」
私は彼らにさっきの出来事を簡単に話して聞かせた。
話し終わった後も三橋君と伊藤君が難しい顔をしていて、私はそんな二人を困った顔で見つめていた。
今井さんだけは意味が分からず頭上にハテナを大量に浮かべていたが、今一から説明するのは面倒なので、まあよし。
しばらくして三橋君が「あー」と声を上げながら頭を掻いた。
「要するにどういうことだよ」
「うーん……。多分、三橋君との距離が一定以上離れるとそっちに引っ張られる……ゴムみたいな状態って言ったら分かる？」
「伸ばすと縮まろうとするってことか。……いやまて、俺が相良追っかけて離れた後はどうだったんだよ」
「あ、ホントだ。あの時は特に何も……」
「だとするとどういうことだ？」
「……あの時は俺がいたからじゃないか」
ふと、伊藤君が呟くように言った。
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玉屋(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます、励みになります！ (2019年3月2日 10時) (
レス) id: 038d2716d2 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新、楽しみにしています！ (2019年3月2日 2時) (レス) id: fd73c1c988 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉屋 | 作成日時：2019年2月5日 9時
