17.その足跡を辿る(7) ページ23
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「あの、……えっと」
散々泣き喚いてようやく冷静になった頃、私は三人の前でひとり体を縮こまらせて正座していた。
伊藤君と理子ちゃんの幼子を見るような優しげな視線が痛い。
三橋君に至ってはなんかニヤニヤしていて、私の号泣をからかう気満々です！ って顔に書いてある気さえする。
私一人だけが重く感じる空気の中、何度か言い淀んだ末に意を決して口を開いた。
「その、……ごめんなさい、本当に」
静かな屋上に私の声だけが響いた。
恐る恐る三人を見上げると、みんな一様に目を丸めていて、私の言葉の意味を図りかねているようだった。
「私、自分だけが悲しいつもりでいて、みんなの気持ちなんてこれっぽっちも考えてなかった。自分の気持ちだけで手一杯になってた。友達だなんていって、信じなかったのは……一番自分勝手だったのは、私だった」
そんな自分勝手の結果がこれだ。
勝手に裏切られた気になって、その信頼を裏切ったのは自分のほうだった。
「ごめん、ごめんね」
止まったはずの涙がまた滲んでくる。
今度は恐怖からじゃない。
三人に対する申し訳なさで、だ。
だけど私が泣くのは違う。それはずるい。
零れないようにと必死に唇を噛んで耐えていると、頭の上から「はぁ〜……」と大袈裟なため息が落ちてきた。
「何回謝んだよお前は」
「…………」
「そんなに謝るような事された覚えはねぇよ。なぁ？」
頭の後ろをがしがし掻いてそう言う三橋君が他の二人を見やるのに答えて二人も頷いた。
三人ともがその顔に笑みを浮かべていて、胸にあったかい気持ちが広がっていくようで。
潤んだ目元を乱暴に拭うと、私も同じように、負けないくらいに笑って見せた。
「ふふ、そっかぁ。……ありがとう」
ふと、チャイムが鳴る。
気付けばもう下校時間だ。
名残惜しいけれど、彼らはもう帰らなくてはいけない。
「あー……、また明日も来るからさ」
「うん。待ってるよ」
少し心配そうなその声に、努めて明るく返答する。
でも本当に心配なんか要らないのだ。
もう怖いことなんかなにもないから、笑顔で三人を送り出すことが出来る。
「またね」が嘘じゃないことを知っている。
朝が来ればまた会えることを知っている。
だから何も怖くない。
「……また明日！」
私はもう一人じゃないのだから。
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玉屋(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます、励みになります！ (2019年3月2日 10時) (
レス) id: 038d2716d2 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新、楽しみにしています！ (2019年3月2日 2時) (レス) id: fd73c1c988 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉屋 | 作成日時：2019年2月5日 9時
