検索窓
今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:54,092 hit

11.その足跡を辿る(1) ページ17

.


 Aに理子を引き合わせたのには、正直下心もあった。
 俺らに話さないことも同性の理子になら話すんじゃないか。
 理子は風紀委員で学校での顔も広いし、理子の知る誰かがAのことを知っているんじゃないか。
 そんな俺の思惑は、理子がAの肩を持ったことでものの見事に外れた。
 学年のどの教室を見てもAが見つからないのだが、それを伝えてもなお理子は「まあいいじゃない」なんて言ってはぐらかしてしまうのだ。
 期待した進展が全く見られないこの状況に、俺は日々イライラを募らせていた。

「それで?」
「だから! あの時Aに何を言われてたのか教えろって!」

 『あの時』とは、理子とAが初めて会ったあの日のことである。
 俺たちから少し離れたところに理子を引っ張っていったAがなにやら耳打ちしていたことを俺は知っている。
 それを聞き出すべく、俺はAがいない隙をついて理子に詰め寄っていた。

「だからそれは女の子同士の秘密なの! しつこいとAちゃんに嫌われるよ!」
「きら……っ?!」

 思わず言葉に詰まった俺に、隣の伊藤が呆れたように嘆息した。
 実はこのやり取りも既に一度やった後だ。
 何度聞いても理子の口が堅すぎて、話が一ミリもに前に進まないのだった。

「ここしばらくAを見張ってた。でもちょっと目を離した隙に視界からいなくなりやがる。昇降口で張ってもみた。でもあいつ、来ねぇんだよ、一度も」
「……一度も?」
「ああ、唯の一度もだ。おかしいだろ」

 伊藤と理子が顔を見合わせる。
 この俺がこれだけ探して、何も分からないってことがそもそもおかしいんだ。

「下駄箱も全部確認した。あいつの名前、ねぇわ」

 それが決定打だった。
 動揺したらしい理子が思わず口走る。

「そんな……、そうよ、Aちゃん普段は保健室登校だって言ってたから、養護の先生に聞いたら……」
「保健室登校?」
「……あっ」

 慌てて口をふさいでももう遅い。
 言うが早いか俺は廊下を駆け出した。
 目指すは保健室だ。



12.その足跡を辿る(2)→←ex6.そうかもしれない(3)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (41 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
75人がお気に入り
設定タグ:今日から俺は!!
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

玉屋(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます、励みになります! (2019年3月2日 10時) (レス) id: 038d2716d2 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新、楽しみにしています! (2019年3月2日 2時) (レス) id: fd73c1c988 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:玉屋 | 作成日時:2019年2月5日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。