11.その足跡を辿る(1) ページ17
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Aに理子を引き合わせたのには、正直下心もあった。
俺らに話さないことも同性の理子になら話すんじゃないか。
理子は風紀委員で学校での顔も広いし、理子の知る誰かがAのことを知っているんじゃないか。
そんな俺の思惑は、理子がAの肩を持ったことでものの見事に外れた。
学年のどの教室を見てもAが見つからないのだが、それを伝えてもなお理子は「まあいいじゃない」なんて言ってはぐらかしてしまうのだ。
期待した進展が全く見られないこの状況に、俺は日々イライラを募らせていた。
「それで?」
「だから! あの時Aに何を言われてたのか教えろって!」
『あの時』とは、理子とAが初めて会ったあの日のことである。
俺たちから少し離れたところに理子を引っ張っていったAがなにやら耳打ちしていたことを俺は知っている。
それを聞き出すべく、俺はAがいない隙をついて理子に詰め寄っていた。
「だからそれは女の子同士の秘密なの! しつこいとAちゃんに嫌われるよ!」
「きら……っ?!」
思わず言葉に詰まった俺に、隣の伊藤が呆れたように嘆息した。
実はこのやり取りも既に一度やった後だ。
何度聞いても理子の口が堅すぎて、話が一ミリもに前に進まないのだった。
「ここしばらくAを見張ってた。でもちょっと目を離した隙に視界からいなくなりやがる。昇降口で張ってもみた。でもあいつ、来ねぇんだよ、一度も」
「……一度も?」
「ああ、唯の一度もだ。おかしいだろ」
伊藤と理子が顔を見合わせる。
この俺がこれだけ探して、何も分からないってことがそもそもおかしいんだ。
「下駄箱も全部確認した。あいつの名前、ねぇわ」
それが決定打だった。
動揺したらしい理子が思わず口走る。
「そんな……、そうよ、Aちゃん普段は保健室登校だって言ってたから、養護の先生に聞いたら……」
「保健室登校?」
「……あっ」
慌てて口をふさいでももう遅い。
言うが早いか俺は廊下を駆け出した。
目指すは保健室だ。
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玉屋(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます、励みになります! (2019年3月2日 10時) (レス) id: 038d2716d2 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新、楽しみにしています! (2019年3月2日 2時) (レス) id: fd73c1c988 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉屋 | 作成日時:2019年2月5日 9時