ex6.そうかもしれない(3) ページ16
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「ねえ、伊藤ちゃん」
その後やってきた三橋と理子ちゃんによって、屋上はまたいつもの騒がしさを取り戻した。
視界の端で、三橋がなぜかAちゃんに睨みをきかせている。
何をやっているんだあいつは。
「最近三ちゃん変よね」
「あいつはいつでも変だと思う」
「うん、それはそうなんだけど」
あれ、と視線の先の三橋を示す。
最近の三橋は屋上に来ては監視でもしてるのかと言う勢いでAちゃんを見張っていたり、かと思えば屋上にも来ず昇降口で何かを待っていたりと分かりやすく挙動不審だ。
本人に直接聞いてみたところによると、「あいつがこそこそ隠し事してんのが悪い」との事である。
理子ちゃんの言いたいことは理解できる。
俺は隣で呆れ顔を浮かべる理子ちゃんに首肯した。
「まあ、あいつは分かりやすい奴だから」
直接明言こそしなかったものの、俺の言わんとすることを察した理子ちゃんが苦笑とともにこちらを向いた。
「あら、でも伊藤ちゃんも結構分かりやすいわよ?」
「……俺?」
「だって、伊藤ちゃんも『そう』でしょ?」
にっこり笑う理子ちゃんは確信を持っている様子だ。
ここで否定したところでおそらく納得してはくれないだろう。
「……かもね。正直、まだ確証持ててないなぁ」
「そうなの? 私からすると二人ともあからさまに見えるんだけどなぁ」
でも、と理子ちゃんが続ける。
「いいわ。どっちにせよ、Aちゃんを泣かせたらいくら二人でも許さないから」
そう言った理子ちゃんの瞳がまっすぐ俺を射抜く。
その迫力に圧されて、黙って頷くことしか俺には出来なかった。
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玉屋(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます、励みになります! (2019年3月2日 10時) (レス) id: 038d2716d2 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新、楽しみにしています! (2019年3月2日 2時) (レス) id: fd73c1c988 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉屋 | 作成日時:2019年2月5日 9時