9.彼女と私の秘密(1) ページ12
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ある日、三橋君と伊藤君が屋上に知らない女の子を連れてきた。
「あら、あなたも二年生なの? 私は五組の赤坂理子よ、よろしくね!」
眩しい笑顔で右手を差し出す彼女の掌に恐る恐る自分の手を重ねる。
触れた瞬間しっかりと握りしめられた。
「なんでお前そんなにビクビクしてんだよ」
「あら。まさか三ちゃん、この子のこと苛めたりしてないでしょうね」
「してねぇわ! なんで俺なんだよお前にビクついてんだよどう見ても!」
「そうなの?」
心底不思議そうに首を捻る赤坂さんに、私は慌てて首を横に振った。
そうではない。そうではないのだ。
「ごめんなさい、あの、同い年の女の子と話す機会があんまりなくて……」
「え、友達とかクラスの人とかは?」
「ああ、うん……、友達……いないので……」
仕様がない事なんだけど自分で言ってて悲しくなってきた。
語尾に向ってだんだんしおれていく私の声に三橋君が大笑いしているし、それを咎める伊藤君ですら肩が笑っているのを隠せていない。
二人ともちょっと私に失礼すぎるぞ。
「えっと、Aさん……Aちゃんって呼んでいい?」
「あ、はい」
「じゃあAちゃん。私と友達になってくれるかな」
赤坂さんの瞳が私を射抜く。私の答えを待っている。
おず、と手に触れている彼女のそれをこちらから握り返すと、赤坂さんの目が輝いた。
「あの、よろしくお願いします……赤坂さん」
◇
「ところでAちゃんって何組なの? 私、二年生なら大体顔は覚えてるつもりなんだけど……」
赤坂さんがふと思い出したように問うたそれに、彼女のお家の道場を助けた話を三橋君たちから聞いていた私はびくりと体を強張らせた。
以前三橋君に同じことを聞かれたとき物凄く雑に誤魔化した挙句一瞬の隙をついてその場から逃げ出した前科があるのだ。
恐る恐る三橋君の方を見ると、表情の抜け落ちた顔が無言でこちらを凝視していた。
「………………」
「ひぇ……」
情けない悲鳴が零れる。
なにあの顔マジ怖い。
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玉屋(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます、励みになります! (2019年3月2日 10時) (レス) id: 038d2716d2 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新、楽しみにしています! (2019年3月2日 2時) (レス) id: fd73c1c988 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉屋 | 作成日時:2019年2月5日 9時