指先を滑る悪意【上】 ページ6
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だめだ。そう思って机にスマートフォンを伏せる。けたたましく鳴る通知音に、私はやはり諦めてアプリを開くしかなかった。あの日から一ヶ月以上経った今、やり場のない後悔が胸を噛んで穴を開けている。
私は晴れて百瀬ちゃんたちのグループに仲間入りした。彼女たちはクラスの中でも最新のスマートフォンを所持しているグループで、たまたま私の初スマホが最新型であったことが誘われた大きな要因らしかった。百瀬ちゃんたちと居るのは楽しく、元いたグループに残り続けるメリットはどこにもなかった。だから私は潔く移籍したし、それを百瀬ちゃんたちも歓迎した。そこまでは良い。しかしそこまでであった。
毎日毎日昼夜を問わず鳴り響く通知音。最初こそ楽しかったのだが、少し返信が遅れただけでひどく詰め寄られた辺りから何かが狂い始めた。試しに「勘弁して」と送ってみようかと閃いたのだけれど、それも端から見れば喧嘩を売っているように見えるかもしれない。どう対処すればいいか思い悩んでいたある日、偶然階段からその声は聞こえてきた。
「そういえばりっこってさ、昔百瀬さんと一緒に居たよね」
「あぁ、あれね」
りっこだ。りっこは、一年くらい前に百瀬ちゃんと仲良くしていた子だ。ある日唐突に百瀬ちゃんたちが無視し始め、他の子も触らぬ神に祟りなしと見て見ぬ振りをしていたのだが、どうしてそれを今。
私は息を潜めて廊下の角から二人の会話を盗み聞きする。
「いやさぁ最近加藤さんと百瀬さんたち仲良さげじゃん？ りっこいいんかなぁて」
「べっつにどうでも」
声に取り付く島もないような拒絶の響きがある。話し相手の子が困ったように息を漏らすのが聞こえてきた。りっこは「だってさ」興奮のため声が裏返っている。
「トークアプリに返信しなかったらすっごい騒ぎ立てるし、既読無視も未読無視も煩くて。そういうの面倒だって言ったら勝手に癇癪起こして無視し始めるし。そんな幼稚な人と一緒にいる価値ないよ」
そこまで噛むことなく言い切るとバカ長いため息を包み隠さず吐き出した。愛想笑いの同意が聞こえてくる。りっこもまんざらでもなさそうだ。
けれど私にとってそれらはどうでも良かった。
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九条あや(プロフ) - のばらさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*^^*) 次回作も頑張りますね！ (2019年1月16日 22時) (
レス) id: 32ff1c1e1c (このIDを非表示/違反報告)
のばら(プロフ) - 上手いことは言えないのですが、凄く面白かったです！ (2019年1月16日 21時) (レス) id: 6840145f54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：九条あや | 作成日時：2019年1月5日 17時
