穿つ泥【下】 ページ5
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それからしばらくして百瀬ちゃんに遊びに誘われた。私と百瀬ちゃんはある程度仲が良いのである。いつものように握らされた五千円札で手土産を買ったあと、百瀬ちゃん宅の門をくぐると庭で数人の取り巻きと談笑していた彼女がこちらに駆け寄ってきた。
「来てくれてありがと！ 実は、優奈ちゃんの他にも何人か呼んでいるんだけど大丈夫？」
「うん」
春にさしかかった芝生は青みがかっている。桜の蕾の芽吹く木の下にレジャーシートを敷いて座るメンツは、左から木本くん、誠ちゃん、麗華ちゃんだった。どの子もこの辺では知名度の高い名家の子である。いつも百瀬ちゃんの取り巻きはやはりクオリティが高いなぁと遠いものを見るように一歩下がって見ていたのだが、いやはやそこに私が呼ばれるのだからもう世の中なにが起こるか分からないものだ。
「それでね優奈ちゃん」
私はレジャーシートに腰を下ろす。続いて真ん中に陣取った百瀬ちゃんが、悪戯っ子の瞳で私の耳元に唇を寄せる。
「私たち五人でグループ作らない？」
「グループ？」
「そうそう。最近加藤さん携帯買ったでしょ？ だからさ、どうかなぁって」
百瀬ちゃんの話を乗っ取った誠ちゃんが眉のあたりに興奮の色を乗せる。
「今流行りのトークアプリでさ、やるの。どう？ 良くない？」
あまりの迫力に思わず腰が下がった。目敏くそれを感じたらしい木本くんが私の肩を軽く叩いて元の態勢になるよう促す。彼の色素の薄い前髪から覗く瞳は爛々と輝いている。
「俺ら、もっと加藤さんと仲良くなりたいんだ」
人当たりの良い笑みに心が揺らぐ。それぞれの顔を見れば私への期待で身体を前に傾けている。
考えるようにわざとらしく顎に手を添えて眉を寄せるが、その答えはもう半分出ていた。百瀬ちゃん達と一緒に居ることに損はない。なにより、私より地位の高い人たちに誘われるのはなんとなく愉快な気持ちがしないでもないから。
「うん！ 私で良ければ」
「やった」
百瀬ちゃんが長い黒髪を揺らして私に抱きついた。重心のバランスが崩れるが、崩壊寸前のジェンガみたいな絶妙な角度を保って、なんとか持ち直す。私が無邪気に笑う彼女に力の籠らない平手打ちをかましたあと、私たちは秘め事を明かすように笑ってみせた。
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九条あや(プロフ) - のばらさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*^^*) 次回作も頑張りますね！ (2019年1月16日 22時) (
レス) id: 32ff1c1e1c (このIDを非表示/違反報告)
のばら(プロフ) - 上手いことは言えないのですが、凄く面白かったです！ (2019年1月16日 21時) (レス) id: 6840145f54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：九条あや | 作成日時：2019年1月5日 17時
