ほんとうは泣いているんだ【上】 ページ8
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季節は巡り、春の影は潜んで夏が辺りを覆い尽くしていた。外では爆発的な勢いで蝉が鳴いている。昼間からの登校ということもあり、教室が騒がしいのに対して廊下はいやに静かである。
月経が今にも始まろうとしていたのだ。あまりにも腰が気怠く重く、下腹に熱い気配があった為、ある程度治るまで家で横になっていた。遅刻したことによって何かを言われないか若干の懸念を抱く。ひどく嫌な予感がした。あたりの空気にはどことなく危なっかしい気配が漂っている。教室までの道のりがいつもより長く感じる。
リノリウムの床に靴音を零しながら歩く。廊下の端に輝くクラスプレートが私のクラスが近いことを知らせている。胸騒ぎを無視して扉に手をかけた時、教室から一際大きな声が聞こえてきた。
「いやー！ もう本当ないわ。あいつ、最新機種持ってるからって調子乗ってるでしょ」
百瀬の鼻にかかった特徴的な声だ。一方的に罵倒する相手は、おそらく私。背中に突然水ををかけられたような恐怖を感じた。肩に食い込む圧迫感にじわりじわりと押し付けられて苦しい。固まった手は逃げることを許さず、取っ手に引っ付いている。
「本当それ。私がフォローしてやる度いい気になってまた既読無視すんの。三軍上がりのへっぽこが調子こいてんじゃねぇよ」
「え……」
不意に声が出てしまった。急いで片手で口を塞ぐ。夢ではないか狐につままれたのではないかと自分の耳を疑う。教室から聞こえてきた今日一番の罵倒は、あの鈴の声で笑う、グループ内で最も優しい麗華ちゃんのものだったからだ。信じられない不機嫌さを凝縮して、挑みかかるような低音は、どうやら百瀬ちゃんたちの良く知るもののようで、「よっ！ 腹黒麗華！」などと囃し立てている。
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九条あや(プロフ) - のばらさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*^^*) 次回作も頑張りますね！ (2019年1月16日 22時) (
レス) id: 32ff1c1e1c (このIDを非表示/違反報告)
のばら(プロフ) - 上手いことは言えないのですが、凄く面白かったです！ (2019年1月16日 21時) (レス) id: 6840145f54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：九条あや | 作成日時：2019年1月5日 17時
