月曜日のねじまき鳥【下】 ページ3
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「それでは今日はここまでです」
先生の凛とした声に私は歓喜による反応で身を震わせた。椅子と床の擦れる音が室内に充満する。続いてみんなの硬直したようないつもと違うであろう声が先生に向けられる。先生も私たちも一礼して、その日は終わりを告げた。
今日は初日ということもあり本来の時間割よりも早く終了した。周りではいくらか打ち解けた子達がさっそくメールアドレスを交換している。
途端、頭の中を小学生時代の記憶が駆け巡った。交換するメールアドレス、正規グループと裏アカグループ、質量を持たない残虐な言葉。自分の知らないところで悪口を喋られる恐怖がみぞおちから這い上がってくる。
机の脇に掛けてある鞄を椅子の上に置いて、中に押し込まれた膨大な数の配布物を突っ込む。新刷りのプリントがくしゃりと悲鳴を上げるが、そんなことは気にしていられない。ポケットに忍ばせていたスマートフォンをひっ掴み私はメールアドレスを交換している輪に入っていった。
「あれ、加藤さんじゃん。交換する？」
輪の中でも比較的後ろにいた子が声をかけてくれた。垂れ目がちな瞳を細めて私に微笑を向けている。ゆるく三つ編みにした長い髪を、うなじの上で巻き上げて留めているのが印象的である。しかし肝心の名前が思い出せず、申し訳なさに眉を下げざるを得ない。
「うん。お願い」
互いにトークアプリを起動する。垂れ目さんがQRコードを表示してくれたので、私はそれを読み取ることにした。
軽快な電子音と共に「追加しますか」という文字が浮き上がる。私は「はい」をタップする。すると新規フレンド欄に「のぞみ」という名前が追加された。垂れ目さんはのぞみというのだろうか。
「のぞみさん、よろしく」
「ん！ よろー」
その嘘偽りない笑顔に少しだけ驚いた。こんな笑い方をする子は私の通っていた小学校には居なかったと思う。
他の子とも次々に交換していき、気づけば新規フレンド欄には二十一という表示がされていた。グループも一つ作られ、デフォルトのアイコンの隣に一年二組の文字が並んでいる。
またグループに入ってしまったことに僅かばかり後悔する。しかしそれよりも、知らないところで繰り広げられる悪口の方が怖かった。
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九条あや(プロフ) - のばらさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*^^*) 次回作も頑張りますね！ (2019年1月16日 22時) (
レス) id: 32ff1c1e1c (このIDを非表示/違反報告)
のばら(プロフ) - 上手いことは言えないのですが、凄く面白かったです！ (2019年1月16日 21時) (レス) id: 6840145f54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：九条あや | 作成日時：2019年1月5日 17時
