やんちゃ盛りの ページ7
鈴芽side
車の中って、それぞれの家の匂いがする。
ルミ、と名乗ったその人の車には、夜の街灯りみたいな大人っぽい香水と、焼き菓子の甘く懐かしいような匂いがうっすらと漂っていた。
私は唐突に知らない人の家に迷い込んでしまったかのような落ちつかなさで、淡く発光するような雨の風景を眺め、フロントガラスを滑って流れる雨粒を眺め、
ハンドルに置かれた白くふくよかな指をこっそりと眺め、
またフロントガラスの雨粒に目を戻した。
とっくに廃線になったバス停に座っとったら気になるやんか、と彼女は言った。
ルミ「それにしても、ええねえ女子旅やなんて。神戸は市内まででええの?」
鈴芽「あ、はい!」
緊張で声が裏返ってしまう。
ルミ「鈴芽ちゃんと、Aちゃん、やったよね?」
鈴芽「はい!」
ルミ「うちはチビたちを松山のおばあちゃんに会わせてきた帰りでね___」
そう言ってベビーミラーを見るルミさん。
やけに真剣な表情で眠る双子が、チャイルドシートに座っていた。
そして、その真ん中に置かれた草太さんの入ったバッグ。
それを膝にのせてすやすやと眠るAさん。
よく見ればクマができていて、
それほど必死に草太さんを探していたのかと思う。
やはり、この二人は幼馴染だけでは言えない関係なのではないか、と勝手に推測する。
ルミ「双子。四歳。花と空」
鈴芽「わぁ…双子ですか」
ルミ「やんちゃやから、毎日戦争よ
でね、うちも神戸に帰るとこやから、あんたら、運がええわ。」
鈴芽「はい!助かります!」
そういうとおかしそうに笑うルミさん。
だけど、すぐにちょっと真剣な顔になって、
ルミ「てか、Aちゃんって美人すぎひん?」
鈴芽「やっぱりそう思います?」
ルミ「もしかして、モデルさんかなんか?」
鈴芽「いや、ただの大学生だと思います。」
ルミ「嘘、高校生かと思ってたわ。」
なんだかおもしろくなって、フフ、と笑ってしまう。
だけど、すぐ後ろでジーッと音がして、私は振り返った。
いつの間にか目を覚ました双子が、私のバッグを開けていた。
草太さんの顔が、無防備になり、
子供にされるがままに左右に揺れている。
ルミさんがベビーミラーを睨んで怒鳴る。
ルミ「コラッ!お姉ちゃんの荷物にさ・わ・ら・な・い!」
双子「はーい」
条件反射のように双子が声をそろえて即答する。
私はAさんがこれでも起きないことに若干不安だった。
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