約束【烏丸草太】 ページ40
「プロになったら迎えにいくから、それまで待っててくれる？」
突然の彼からの告白に驚きつつも、その言葉を信じていいのか不安になった。彼がプロになれないと思っているわけではない。むしろプロになれる素質がある。彼氏と彼女という関係ではないが、お互いに好意をもっているのは分かっていた。だからこそ、その言葉は嬉しかったが不安だった。彼がその時に、まだ私のことを好きでいてくれているのか。そのことだけで頭がいっぱいになる。そんな回らない頭で彼に必死で返事をする。
「······ずっと私のこと、好きでいてくれますか？信じてもいいですか？」
泣くつもりなんてなかったのに、涙はボロボロと頬を伝い声は震えた。彼は私を見て、目を丸くしていたが次第に涙目になっていった。彼の泣き顔なんて見たこともなかったので、珍しさと可愛さで思わず見入ってしまった。すると、
「もちろん、ずっと好きだよ。信じて待ってて」
目を細めて恥じらいながら笑う彼が好きすぎて、胸がキュンとなった。すると、優しく左手をとられ、ちゅっと薬指にキスマークをつけられた。不意打ちすぎる行動に胸の高鳴りが加速して、音が聞こえてしまうんじゃないかと心配になった。そのあと彼は高校を卒業し、私も後を追うように卒業していった。
数年たった今、連絡などはしているが会ったりはしていない。声を聞くくらいならできるけれど、夢を追いかける彼の邪魔はしたくないと、自分の方からしないように約束した。けれど、どうしても声を聞きたくなる。姿を見たくなる。そんな時は、テレビに映りゴルフをしている彼を見て我慢していた。だが、彼はもうプロになった。そろそろ会いたいなと、我儘な気持ちが込み上げてくると同時に不安も押し寄せる。もう私のことなど忘れているのではないか。もう彼の人生に私は必要ないのではないか。そんなことを考えていると、インターホンの無機質な音が部屋に響いた。誰だろうと玄関を開けると
「待たせてごめんね。迎えに来たよ、A」
前より少し大人びた彼が、花束を持ちながら昔と変わらない表情で微笑んでいた。不安なんか一瞬で消え去って、強く強く彼に抱きついた。思わず涙も出てきて、まるで高校生の頃と一緒だなと思った。すると彼は、左手の薬指にキスマークよりもっと残るものをつけた。
その彼は、今日も隣で優しく笑っている。
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黛(プロフ) - みるくさん» コメントありがとうございます！とても嬉しいです！！これからも頑張っていくので、楽しんでいただけたら嬉しいです (2022年2月7日 7時) (
レス) id: 26e9e65c58 (このIDを非表示/違反報告)
みるく(プロフ) - すごく面白いです！頑張ってください！ (2022年2月7日 7時) (レス) @page42 id: 14f43f79f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黛 | 作成日時：2021年11月27日 17時
