理音×草太 ページ19
「なぁA、 部室の掃除手伝ってくんねぇか？」
そんなふうに声をかけてきたのは、私が所属しているゴルフ部の先輩、小山内理音である。部室の掃除は日替わりなのだが、今日は一緒に担当するはずの烏丸先輩がいないらしい。先輩のお願いならば断る理由はないので快く了承した。
「じゃあ、そこの棚の片付け頼むわ」
そう言って、理音先輩は道具の整頓を始めた。特に話すわけもなく、お互い黙々と作業に取りかかった。すると、少ししてから理音先輩が口を開いた。
「Aって好きな人とかいんの？」
突然の質問に驚きすぎて、棚から物を落としてしまった。なぜ急にこんな質問をしてきたんだろうと焦っていると
「ははっ、動揺しすぎだっての」
なんて陽気に笑っている先輩をじっと見つめ、なんて返そうかと迷っていると、部室のドアが音を立てて開いた。すると、眠たそうな目をした烏丸先輩があくびをしながら入ってきた。
「あれ、二人で何してるの？」
「お前が来ないから、Aに手伝ってもらってんだよ」
烏丸先輩が来て、理音先輩との会話が途切れたのは少し助かった。しかし、私の安心は烏丸先輩の一言で崩れていく。
「それで、Aは好きな人いるの？」
ビクッと身体を震わせると、いたずらが成功した子供のような顔をしてこちらを見てくる烏丸先輩。入ってくる前に、私たちの会話を聞いていたらしい。なんて意地悪な先輩なんだろう。人が動揺しているのを見て楽しんでいる。
「······別にいませんけど」
と返事をすると
「じゃあオレ、Aのこともらっちゃおっかなー」
と烏丸先輩がニコニコしながら言うので、なんでこんなに平然と恥ずかしいことを言えるんだろうと思った。すると黙っていた理音先輩が
「いや、お前にAは渡さねぇよ」
なんて理音先輩も平然と言うので、少女漫画や恋愛ドラマのような展開にドキドキしてしまった。
「烏丸先輩も理音先輩も、急にどうして······」
と言い終わる前に、二人から手を取られ
「前から好きだったんだけど、気づいてねぇの？」
「オレも、結構アピールしてたんだけどなぁ」
急にそんなこと言われても困ってしまう。尊敬している先輩からの好意なんて照れるに決まっているだろう。
「これから覚悟してろよ」
「これから覚悟してね」
彼らの熱の篭った瞳に射抜かれ、ドキドキしている自分がいることには、まだ気づかないふりをしておこう。
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黛(プロフ) - みるくさん» コメントありがとうございます！とても嬉しいです！！これからも頑張っていくので、楽しんでいただけたら嬉しいです (2022年2月7日 7時) (
レス) id: 26e9e65c58 (このIDを非表示/違反報告)
みるく(プロフ) - すごく面白いです！頑張ってください！ (2022年2月7日 7時) (レス) @page42 id: 14f43f79f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黛 | 作成日時：2021年11月27日 17時
