会いたかった。【猫の恩返し】

11･ありがとう ページ11

「バロンは全然変わってないね。私の好きなバロンのまま」


思っていることをそのまま伝えてみる。

どうせ会えなくなるなら、と思って、あの時みたいにもう一度言ってみた。

だけど、バロンはあまりそういうことに気づかなそうだ。

関心もなさそう。


「Aも、真っ直ぐで素直なところはそのままのようだね」

そう言って微笑むバロンに、嬉しいけど、もどかしさも感じる。

バロンの" 好き "は、私が望む好きではない。

「……ありがとう」

そもそも私よりもずっと小さい猫の人形に恋してしまっているのすら、客観的に見たら馬鹿らしい話で。


だけど、心を込めて作られたバロンには命が宿っている。

私と同じ、命が。

話すことも出来るし、触れることも出来る。


バロンがお姫様抱っこをしてくれたこと、お別れの時に頬を撫でてくれたこと。

全てが私の中で初めてで、心に甘く残っている。

あれは確かに私とバロンの思い出で、" 人と人形 "と言う言葉では表したくはなかった。



「……A？」

「！！あっ、いや、ちょっと昔のこと思い出してたんだ」


「ああ……あの日は本当に大変だった」

笑いながらそう言ったバロンに、そうだよね……と私も苦笑いした。

「でも、それ以上に良い経験で、とても楽しかった。こうしてAに出会うことも出来た」

「改めて、ありがとう、A」

……何で、こんなことが、スラスラ言えちゃうんだろう。

紳士ってやっぱりこういう感じなのかな。



「そっそんな！！お礼を言うのはこっちの方だよ……みんなのおかげで、大事なことに気がつけたんだもん」

「こちらこそ、ありがとう、バロン」


バロンは、ああ、と言って微笑んだ。


……この時間がずっと続けばいいのに。

ティーカップを片付けているバロンの後ろ姿を見て、そう思った。

だめだな、会えただけでも幸せなのに、次から次へと望みが増えてしまう。



コンコンッ

誰かが扉を叩いた。


ーーーーーー
明日から学校が始まるので、1日1話更新になると思われます！

皆さまをお待たせしてしまうかもしれませんが、必ず完結させるのでよろしくお願いします。

焦って書いて、文章おかしくないか、と思われる部分もあるかもしれませんが、精一杯書かせていただきます！


(次回作は、僕のヒーローアカデミアの緑谷出久くんのお話を考えています。

興味ある方は、お話が出来た際見ていただけると嬉しいです。)

作品をより良くする為にも評価、コメントお待ちしてます！

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