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三十六歩 ページ36

「はぁ…れい……れぇ…」

これは誰なんだ。

俺を強く抱きしめながら、
零と名前を連呼するこの人は誰だ。


知らない。


こんな人知らない。


知っているあの人のはずなのに、その面影がない。





「やっと手に入る…やっとだよ」





俺が知っている五条悟はそんな事言わない。



もしかして他人の空似なのでは?



そう思い始めてしまった。




だって、あまりにも違う。




彼はぐぐぐと俺を強く、強く抱きしめる。


まるで逃がさないかのように。


隙間すら与えないかのように。



痛い。



痛い。



俺は空を掴んでいた手で彼の背中を叩く。


ドクンドクンと心臓がうるさい。





『痛い……です』





か細い声だった。



喉がカラカラで、声が震えて、
なんとも情けない声だった。


それを聞かれたことすら少し恥ずかしい。




「あ、ごめんね。つい、嬉しくて」




彼は意外にも俺の言葉をすんなり聞き入れて、
力を緩めた。抱きしめているのは変わらないが。

ゆるゆると俺の腰に両手を置いて、
彼はニコニコと笑う。

少しの沈黙が流れた。




「…零、こっち見て」




顔を背けて、壁を見つめていた俺に言う。

その言葉に、強制的な何かを感じて、
俺はゆっくりと彼を見る。




青い瞳と目が合った。




『あっ………ごじょ、ぅ…せんぱ』



「ハッ…やっと呼んでくれた。
でも、もう先輩じゃないから、悟って呼んで欲しいな」



『………』




あのキラキラ光る青から背けるように、
顔を俯かせる。


変わらないあの瞳が、
本当に五条悟であるんだと確信させた。


でも、それでも、信じられない。





「零、悟って言ってみて」



『……っ』




何がしたいんだ。


俺をどうしたいんだよ。


俺の腰を掴む手にぐっと力が入る。
引き寄せられた腰は彼の身体にとんっとぶつかった。





「ねぇ、言って。お願い」





懇願するような声。


聞いたことない。


知らない。


こんなの知らないよ。


もう訳わかんない。


俺は顔をあげて、五条悟を見る。





『…さ、…さとる』





小さい声だった。


でも言った。


カラカラな喉で、
久しく口にしてなかった名を呼んだ。



瞬間、腰にあった片手が俺の後頭部に移動する。




『ぇ…』




ぐっと引き寄せられた頭は、
目の前に引き寄せられ、
当然そこにある顔とぶつかる。


目の前で白い糸が揺れた。

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- 続き待ってます! (9月18日 1時) (レス) id: 61fc42598e (このIDを非表示/違反報告)
ボブ(プロフ) - 更新待ってます。 (2022年7月12日 21時) (レス) @page36 id: 95a51c0b56 (このIDを非表示/違反報告)
すめし - 好きすぎる、、、 更新頑張ってください!! (2022年3月17日 21時) (レス) @page36 id: b2ccf5b6d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴえ - 続きが気になりすぎる…!! (2021年7月23日 21時) (レス) id: 13f7b558a6 (このIDを非表示/違反報告)
ボブ - 更新待ってます。 (2021年6月22日 14時) (レス) id: 95a51c0b56 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かるーあ | 作成日時:2020年12月27日 9時

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