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三十二歩 ページ32

バァンッと勢いよく扉が閉まる。


『つ、めたっ…!!』


ザーッと降りかかる水にビクリと身体が震えた。

俺の手を引っ張り、
店から出た夏油先輩は無言のまま、
俺の家に来ると風呂場に来て、
冷たい水をぶっかけたのだ。


正気の沙汰じゃない。


まだ寒くない季節だから良いにしろ、
これはいくらなんでも酷すぎでは無いだろうか。


服がべたべたと肌にくっついて気持ち悪い。


俺は無言で俺を見下ろす彼をギロリと睨む。



『夏油先輩』

「……」

『何か言ったらどうですか』



明らかな怒ってますアピール。

そんな俺に、
先輩は手に持つシャワーヘッドをまた向けてきた。


そこから出る冷たい水が、
また俺に降かかる。

この人、!!

流石にこれは俺でも本気で怒る。




『ッ、せん、ぱい!!』


「…………だ」


『?』


「嫌いだ…猿は……非術師は」




真っ黒な目で、
ぼーっと俺を見下ろしながら、
先輩はそう言う。


………なんだよ。そんな顔するなよ。

怒りたくても怒れないじゃんか。




「どうして、あんな奴らのために、
私たちが労を尽くさないといけないんだ」


『……それは、だって…
…非術師は、守るべき対象だって』


「呪霊を生み出すのは、彼らなのに?」


『え』




トンッと先輩が壁に両腕をつく。

先輩の顔が目の前にある。
つくづく顔がいいなと思う。

ジャーッと流れたままのシャワーは、
俺と先輩の足元を濡らす。




「どうして、呪術師が彼らのために

死なないといけないんだ」




くしゃりと顔を歪めて、
彼はそう言って俺を抱きしめた。


からんっと音を立ててシャワーヘッドが床に転がる。


先輩は小さな声で「どうして」を繰り返す。




『……』




分からない。


考えたこともなかったな。


だって、そういうもんだって思っていたから。




『助けたくないと思ったら助けない。
助けたいと思ったら助ける。

それでいいじゃないですか』




どうして他人のためにそこまで悩めるのだろう。


そういうもんだってくくってしまえば楽なのに。


謎だ。





「…れい」




俺の名前を呼ぶ先輩。


顔は俺の肩に埋もれていて見えない。









「私についてきて。








明後日、ここを出るから」









その言葉に、俺は何も返さなかった。

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- 続き待ってます! (9月18日 1時) (レス) id: 61fc42598e (このIDを非表示/違反報告)
ボブ(プロフ) - 更新待ってます。 (2022年7月12日 21時) (レス) @page36 id: 95a51c0b56 (このIDを非表示/違反報告)
すめし - 好きすぎる、、、 更新頑張ってください!! (2022年3月17日 21時) (レス) @page36 id: b2ccf5b6d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴえ - 続きが気になりすぎる…!! (2021年7月23日 21時) (レス) id: 13f7b558a6 (このIDを非表示/違反報告)
ボブ - 更新待ってます。 (2021年6月22日 14時) (レス) id: 95a51c0b56 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かるーあ | 作成日時:2020年12月27日 9時

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