【呪術廻戦】高専辞めたら先輩病んでた【男主】 (ページ29)

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二十九歩ページ29

堕ちて、堕ちて、堕ちて。

そうして、私の元に来ればいい。

ゆっくり、ゆっくり。

ゆっくりでいい。

君を猿から切り離し、家族として迎え入れよう。

理想的な世界を創るために。

そのために私は、君を＂肯定＂しよう。

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ピピピピピピと鳴るスマホのタイマーで、
パチリと目が覚める。

『………』

ぼんやりと時計を見て時間を確認すれば、
いつも通りの時間。

いつも通り早めに起きれたみたいだ。

俺は固まった身体をほぐすと、
毛布を被ったままベッドから下りて、
シャーッとカーテンを開けた。

暗いと二度寝したくなるからな。

『眩しい…』

強い日差しに思わず目を細める。

俺は仕事へ行く準備をしながら、
昨日起きたことを思い出した。

ゴツゴツした手で撫でられた頭。

するりと手を添えられた頬。

低い声。

まだ焼き付いたように覚えている。

「その＂どこか欠けている＂君に興味があるんだ。

そんな君に、

私にとっての＂存在意義＂を見出したんだ」

「私は他とは違う。

君が、必要なんだよ」

自分に存在価値なんて、ないと思っていた。

俺がいなくなって何か変わるか、
と言われたら、何も変わらないし。

世界に影響はあるか、
と言われたらＮＯだ。

結局はいてもいなくても同じ、
幽霊みたいなのが俺なんだと思っていた。

『…でも』

でも、先輩は俺が必要だと言ってくれた。

なんの価値もない俺に、

価値を与えてくれた。

あんなこと言うのは、
きっとどこを探しても先輩しかいないだろう。

「ご、五条だよ。

五条悟がわざわざ職員室に来て、

泣きながらお前に伝えたいことがあるって

言ってきたんだよ！！」

その時、何故か、
職員室で泣く五条先輩が脳裏に浮かんだ。

俺のために泣いた人。

…いいや、そんなわけない。

そんなはずない。

あの人が俺の事を想うなんてことない。

あの人は、もう、関係ない。

バシャッと顔の水をかけて、意識を覚醒させる。

『…会社行こ』

めんどくさい。

ぐるぐる考えるのも。

だから、深く考えるのはやめよう。

俺は俺を必要とする人のために生きればいい。

そうでないと、また見失ってしまうから。

自分の生きる理由を。

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