第38話 融解 ページ42
「…だが妙だな。何故ソイツはAを家へ戻そうとするんだ？」
考える姿勢からAの方に向き直る鬼道。先ほどの電話の内容が気にかかっているようだ。
「わからない…でも何か企んでるのは確かだ。ゆずの居場所だけは絶対にバレないようにしないと…」
「そうだな。瞳子監督にも話したほうがいいんじゃないのか？何かあってからでは遅いぞ」
そう語る鬼道のゴーグルが鋭く光る。
確かに、ゆずの預け先を与えてくれたのは他でもない彼女だ。話す義務はあるだろう。
「…うん。今度、話してみるよ」
「それがいい」
Aの言葉に頷く鬼道。
全て打ち明けたことで、先ほどよりも幾分か心が軽くなったのを感じたAは鬼道に礼を言った。
「…礼を言われるようなことなどしていない」
「ふふ、優しいんだな…鬼道くん」
表情を変えないぶっきらぼうな彼の態度が何故だか嬉しくて、唇が弧を描いた。
人1人分ほど距離のある2人の間に、穏やかな風が吹く。
「…俺はお前と…Aと一緒にサッカーが出来て良かったと思ってる」
「！」
少しの沈黙の後、突然の鬼道の言葉に、Aの瞳が水面のように揺らいだ。
「どうしたの、急に…」
「…今の雷門イレブンには、Aが必要不可欠だ。それを忘れるな」
「………っふふ」
「……」
鬼道のその言葉が、きっと精一杯の気遣いなのだろうと、Aは嬉しくてつい笑みが溢れた。
くすぐったいその優しさが、Aの目頭を熱くする。
「…ありがとう、鬼道くん。………俺も、このチームでサッカーできてよかったよ」
「…フッ」
いつものように不敵に笑って見せる鬼道。
初めて打ち明けたのが彼で良かった、とAはバレないように目元を袖で拭った。
「みんな待っている。そろそろ行くとしよう」
「…うん」
2人は足並みを揃えて、みんなの待つキャラバンへと進み出した。
横断歩道で信号を待つ間、鬼道は隣のAに目を向ける。
少し濡れた睫毛が、夕陽に反射してきらきらと光っているのを見て、何故だか胸が締め付けられる様な感覚に陥った。
「ん？」
「…いや」
見られていることに気づいたAが鬼道の方へと振り向くが、すぐに鬼道は目を逸らす。
ゴーグルのレンズの奥で赤い瞳が悲しげに揺れているだなんて、Aは知る由もない。
切なく軋む胸の痛みを誤魔化すように、鬼道は横断歩道を駆け足で歩いた。
静かに暮れる夕陽は、今日はいつもより眩しい。
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あ(プロフ) - 尊都さん» 尊都さんコメントありがとうございます😳そう言って頂けて嬉しいです；；本編の方にもバレンタインの話みたいな恋愛描写もう少し入れていきたいですね〜 (2月19日 11時) (
レス) id: 6fef9200f8 (このIDを非表示/違反報告)
尊都(プロフ) - 司令塔タイプのイケメン大好きです🥺バレンタインのお話も最高でした💖お気に入りに追加しました！続き楽しみにしてます！✨ (2月18日 23時) (レス) id: 6a52012404 (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - リポポプさん» リポポプさんありがとうございます~！気に入っていただけたようで嬉しいです🥺✨今どき無印の男主作品見てくれる方ってすごく貴重なので二度もコメント頂いちゃって感無量です、、🙇 (2月15日 12時) (レス) id: 6fef9200f8 (このIDを非表示/違反報告)
リポポプ - バレンタインストーリーありがとうございます😭😭素敵なお話すぎて心がときめきます、、、風丸さんとの絡み大好きです🥰🥰 (2月14日 16時) (レス) @page35 id: 35e98c7eb3 (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - あさん» おけですよ！！あの、あさんのボードに返事送りましたのでボード返事待ってます。 (2月9日 12時) (レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あ | 作成日時：2024年1月24日 6時
