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そんなことを考えていたら、ぐいっと勢いよく引っ張られた。
「うわ…っ!」
バランスを崩して、ペアの男子に思いきり抱きついてしまう。
「…!!た、高杉くん…っ」
「っ!悪い、痛かったか?」
慌てて起き上がったが、顔を真っ赤にさせたペアの男子は、そのまま動かなくなってしまった。
しかし、今はフォークダンス中。
丸くなって踊っているため、誰かが止まると周りも止まらなければいけなくなる。
「高杉ー!大丈夫かぁ?」
教師の呼ぶ声が体育館にこだまして、皆がこちらに視線を向けた。
「おい、大丈夫か?…一旦抜けるぞ」
未だに顔を赤くさせた男子に、聞こえているか分からないが声をかけ、
教師に大丈夫だ、と頷き、輪を出た。
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「ほら、水。軽い熱中症じゃないか?体育館暑いし…」
「あ、ありがと…。
……でも…熱中症じゃないと思う…。」
水を受け取った男子がもごもごなにか言っているが、聞こえない。
「先生に聞いたら、休んでて大丈夫だって。」
そう言って、俺も横に腰かけた。
入江はあの瞬間しか俺に目を向けず、今も輪の中でダンスの練習中。
恋人が転びかけたんだ、少しくらい心配してくれてもいいんじゃないか。
…やっぱり、入江の気持ちのベクトルは俺に向いていないのかな…。
なんだか、胸が苦しくなって、鼻がツンとしてきて。
そんな自分の弱さを隠すために、膝を抱え込んだ。
すると
「高杉くん、大丈夫?!」
隣で必死な形相で俺を心配するクラスメイト。
「あ、や、大丈夫…。てか、声でか…。」
「高杉くん、さっきも転んでたし。やっぱり自分で気づいてないだけで体調悪いんだよ…。
ほら、保健室行こう?」
すっと手を差し伸べられ、断ろうとした次の瞬間。
グイッ
「え…っ」
二の腕を掴んで、俺を立ち上がらせたのは、クラスメイトではなく…
「…い、りえ…。」
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作者名:海月 | 作成日時:2020年5月2日 14時