今度は指にして？【arym】 (ページ24)

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八乙女side

教室の窓から外を切なそうに見る山田

その瞳は、悲しげに揺れている

視線を追って、窓の外を同じくみつめるとそこにはふたつの影

どちらも見覚えのあるシルエットだ

……知念と大ちゃんか

山田が、大ちゃんのこと好きなんだろーなってのは鈍い俺でもわかるくらい山田がわかりやすいからだ

八「山田ー、この布持っててくんねえか？」

放っておけば、いつまでも窓の外を見続けるであろう山田を呼ぶ

俺とは反対側の机に座り、布をちょこんと持った山田はまたぼーっとし始める

最初のうちは、あんまり気にしてなかった俺だけど、ふと山田を見ると額に汗を浮かべていた

心做しか息も荒い気がする……

八「山田、大丈夫か？」

心配になって思わず、山田の頬を触ってしまっていた

山「っ……！！」

はっとしてこちらを向く山田の瞳はまだ悲しみに彩られていて、ゆらゆらと揺れている

八「なんかあったのか知らねえけど、無理すんなよ」

うそ、ほんとは知ってる

大ちゃんの恋の相談にのっていることも。

知念を送り届けてって、大ちゃんに言ったのを後悔してるってことも。

好きなやつの恋に協力するなんて、お人好しにも度が過ぎんだろ

俺は恋とかよくわからないし、気持ちを揺さぶられるほど好きになった相手もいない

だけど

こんな弱々しい山田は放っておけなくて、

なにか声をかけてやらなきゃって、

そう思った

八「相手のことを考えて、行動するのも大事だけど、山田自身がどうしたいかっていうのも大切にしないとだめだぞ？」

山「俺、自身？」

八「そう、人のことを思いやるっていうのはとっても大切だけど自分のことを蔑ろにしてる奴のとこに幸せは来ねえからな」

そう言うと、山田はビクッと肩を揺らして俺をみつめた

山「そう、なんだ……。」

山「ありがとう、光くんっ！！！」

それは俺が初めて見た山田の笑顔

めちゃくちゃ可愛いかった……