31 ページ31
Aは困った様に眉を下げて笑い、少し目線を空中に泳がせてから口を開いた。
「私ね、中也さんが思っているより性根が腐ってるクズなの。」
「そりゃそうだろ。太宰の妹なんだから。」
ちょっと傷ついた、とわざとらしく笑うA。
Aの意図が読み取れず謎は深まるばかり。
それからAは今にも泣き出しそうな顔をして云った。
「……中也さんが私の事を好きって、知ってたの。」
俺は何も云えなかった。それどころか指ひとつ動かす事もできなかった。
知ってた?なんで…
Aは矢っ張り、と呟く。
「人が自分をどう思っているかとか、自然にわかっちゃうんだよ。
まぁそんで、中也さんを試したかったの。私の事本当に好きかどうか。
私にはない感情でわからないから凄く極端になっちゃうけど、これが最後だから付き合ってくれる?」
「…あぁ。」
Aは有難うと笑い、背を向けて歩き出した。
そして落ちるギリギリの所まで行ってこちらを振り返った。
背後には何もない。下には海。落ちれば死ぬ__
Aには微塵の恐怖も見えず、甘い物を食べている時の餓鬼の様な無邪気な笑顔を浮かべていた。
「私もお兄ちゃんの妹なんだ。だから、死にたがりの血が流れてる。」
「……莫迦!てめっ…」
何をしよとしているかに気づき走り出し、Aの手を掴もうとした俺の右手は虚しく空を切った。
「ばいばい。」
679人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
フューズ(プロフ) - 恋する中也さんがめっちゃ可愛いです!これからも更新頑張って下さい! (2018年3月8日 23時) (レス) id: 533c8db921 (このIDを非表示/違反報告)
太宰中也 - 読むの楽しいです!頑張ってください! (2018年3月7日 20時) (レス) id: 73affc4735 (このIDを非表示/違反報告)
ともか(プロフ) - 続編おめでとうございます! また読めるとなりとても嬉しいです! (2018年3月7日 12時) (レス) id: 80eb368801 (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - 続編おめでとうございます!完結したのかと思ってたんですが……続きがあるなんて……!これからも頑張ってください! (2018年3月7日 7時) (レス) id: 198a7174c6 (このIDを非表示/違反報告)
ネイラ(プロフ) - 続編おめでとうございます!更新される度に読ませていただきました!とても面白いです。これからも頑張ってください(*^^*) (2018年3月7日 7時) (レス) id: 21338af0ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:にちか | 作成日時:2018年3月7日 1時