中原幹部と家出少女。【文スト】

17 ページ17

目覚めるとベッドの上に居た。


電話の後、中也さんに抱きしめられて泣いた所までしか記憶がない。


瞼がひりひりするのは冷やさずに寝たせいだろう。


リビングから漂ってくる匂いが鼻腔をくすぐる。


二度寝をしようかと考えたが、お腹も空いたしご飯を食べるか。


「酷い面だな。」


起きて第一声がそれですか。兄と同レベですか。


とは云え今の自分の顔が気にならない訳がなく、洗面所に向かう。


「…酷い顔。」


思った通り目が腫れていた。


リビングに戻ると、保冷剤を用意してくれていた中也さん。


「遅いかもしれねェが、少しはマシになんだろ。」


兄と同レベとか思ってごめんなさい。中也さんの方が紳士でした。


差し出された保冷剤を有難く受け取る。


椅子に座ると同時に机に置かれた珈琲とトースト。


「今日仕事か？」


「うん。面倒臭いから行きたくない。」


「昨日も休んだろ。ちゃんと行け。」


流石は闇社会で幹部にまで上り詰めただけある。真面目だよこの人。


「中也さんみたいに皆勤賞目指してないんだけど。」


「目指してねェよ。普通だわ。」


「果たして、私の普通と貴方の普通は同じだと云い切れるだろうか…」


「急に変なナレーションつけんな。」


中也さんの冷たいツッコミは無視。


そんなだからちびなんだよ。


「164cmと160cmかぁ。」


「喧嘩売ってんのか？」


「1万円で買ってくれるなら受けて立ちますよ。」


「莫迦だろ。莫迦だろ手前。」


何で2回云ったの、と聞けば莫迦だからだよ、と返される。


莫迦って云う方が莫迦なんだよ莫迦。

18→←16

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す