夜の水晶【文スト】【実況者】 (ページ9)

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2つ目の悪夢ページ9

時は少し遡り────

太宰と国木田と探偵社に飛び込んできた依頼者は我武者羅にヨコハマの街を駆けていた。
人混みの中、流れに逆らう彼らの道が自然と開けてしまう。それ程一刻を争う程の依頼なのだ。

「……すみません。事前予約もなしに連れ出してしまい……。」

依頼者は言う。

「良い。気にするな。これでも仕事だ。それより、目的地はまだか？」

長い髪を靡かせながら国木田が言う。

「お〜い国木田くぅ〜ん。予定狂わされた事ぐらい素直に言ったら？」

「五月蝿い！この程度の出来事等お前が仕出かす不祥事や予定外の奇行に比べたら！可愛いにも程があるわ！」

「うっわぁ理想主義者が泣いてるよ。」

「黙れ！貴様、仕事が終わったら覚えておけ！」

「はーいはーい」

人をも逃げ出す程のスピードでこのような息が合う言葉の応酬(太宰の弄り)をしている2人を見て依頼者の男は思わず息を呑んだ。

「……疲れないのですか？」

男は疑問をそのまま2人にぶつけた。

「ふっふっふ、黄田くん。」

太宰は黄田と言った少年に向けてにこりと微笑みかけた。

「我々は武装探偵社だよ？これ位のランニングは準備運動にもならないよ。」

「でも国木田さんに比べて随分と息が切れて居られる様ですが？」

黄田と言われた男はまたも疑問を太宰にぶつけた。それを聞いた太宰が死にそうな蛙の様な声で唸った。

「うううううむ……。君は本当に鋭いようだ。だがしかし、それはきっと気の所為だよ黄田くん。見給え！このような細身でスラリとした私のどこが」

「ほざけ。貴様は非戦闘員よりだろう。」

全く息切れのない国木田は酷く低い声で太宰に突っ込みを入れる。

「日頃の行いだ。」「非道いよ国木田君〜。」

日頃からこうなのだろうか。

って言うか仕事中だよなこの人達。

完全に迷子になった緊張感と焦燥感は目的地に到達するまでこの2人に戻って来る事は無かった。