夜の水晶【文スト】【実況者】 (ページ1)

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或る日のヨコハマページ1

芸術品と見紛うような綺麗なビル群が立ち並ぶヨコハマ。

その中でも異質だが美しい街並みとまるで「当たり前」とでも言う様に自然と馴染んで並ぶ赤茶けた古い煉瓦の建物。

風に運ばれ匂うは潮の香り。

人々は今日も様々な心情を顔に描き、街を歩く。

「おい太宰！！」

例の煉瓦の建物からだろう。

「又、武装探偵社か。」

人々は笑って去って行く。

「お前は全く、何故何時も遅刻をするのだ！？仕事をしろ！」

「あはは〜。国木田君って何時も怒ってない？カルシウム足りてる？」

「煩いミイラ男！！」

ペラペラと手帳の頁をめくりながら蓬髪のミイラ男……太宰を怒鳴る男性……国木田のやり取りを見ている他の社員は「何時もの事だ」「また始まった」と悟り仕事に戻る。

敦や鏡花といった新米社員もこの風景には慣れきってしまっている。

「はぁ……。今日はこの後依頼人が来るからな。仕事はそれまでにあらかた片付けておけ。」

「依頼人？どんな依頼なんですか？」

ふと疑問に思った敦は国木田に訊ねる。

「依頼の内容は直接説明するそうだ。」

「それに。」

前触れも無く太宰が横から顔を出してきた。

「その依頼人は女性だそうだよ！嗚呼、心中してくれないかなぁ……。」

「女性か……。」

敦は苦虫を噛み潰したような顔をする。

以前、依頼人と偽ってポートマフィアが敦を生け捕りにしようと襲いに来たのだ。
今回もそのような事になったら……。

「敦君。」

またもや前触れも無く太宰が声をかけてきた。

「大丈夫だ。」

たった一言。
しかしその一言は敦を安心させるには十分すぎる一言だった。

「全く。貴様は呼吸をすること以外に他人の利になる事は無いのか？」

「酷いなぁ。これでも善良な一般市民だと言うのに。」

「仕事をしろ。」

「仕事仕事ばっかり云ってると理想の女性はどんどん離れて行っちゃうよ。
あっ国木田ってもしかしてモテないでしょう？」

国木田の万年筆が折れた。