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水蒸気 ページ9

「…えっ、」


俺、バレー部2年だから、とその人は淡々と言葉を告げる

…何も知らなかったし、教えてくれなかった


木葉「ちょっと待ってみ、聞いてみるから」

「…ありがとう、ございます」


ポッケに入れてたスマホを取り出してカチカチと操作する先輩を見る

そのスマホを耳に当てた


木葉「もしもし木兎〜赤葦いる?…は?あいつ補習なの?」

「…補習?ちょっと、」

木葉「あ、おい!」


スマホを奪ってスピーカーに変える
スピーカーに変えなくてもいいぐらいデカい声だな



木兎「最近あかーし、彼女の事で悩みすぎてテスト勉強手付かずでプレーも最近調子悪いらしい!珍しいよな〜」


木葉「…はは、珍しい、な」


チラ、と先輩は気まづそうに私を見る


「補習って何時に終わりますか?」

木兎「えーー、確かあと1時間くらいじゃね?」


ていうか誰?と言う言葉を言い終わらないうちに電話を切った

そのままスマホを先輩に渡す


「奪っちゃってすみません、ありがとうございます」


木葉「い、いや……大丈夫?」


「…大丈夫です、京治も多分近いうちに元に戻りますから」


木葉「…そ、じゃ、気をつけてな」


「はーい」

ペコリ、と一礼して先輩の背中を見送る


午後17時30分
冬真っ最中のこの時期はもう既に空は暗くなり始めている


「…あと、1時間」

ゆっくりと息を吐けば空中で水蒸気が溶けた



.


赤葦「……A、A」


「んんん……京治?」


赤葦「びっくりした、死んでるのかと思った」


「…物騒やな、寝てた?」


赤葦「ガッツリと」


マフラーに顔を埋めて、目を閉じるとそのまま眠っていたらしい


補習が終わって携帯を開くと、私からのメールを見ていそいで来てくれた


赤葦「…にしても突然どうしたの?なんかあった?」

「…うん」


“なんか会いたくなったから”なんて今の私が言っても、京治にとってはただの縛りでしかなくなる


それならせめて、もうこの関係に終止符を
私という呪縛から、私が解放してあげなくちゃ



「ねぇ、京治


別れよっか」



京治は目を見開いて、それから黙って頷いた

シチュー→←会いたくなった



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作者名:イオリ | 作成日時:2020年8月12日 23時

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