癖 ページ27
元カレ
……元カレかぁ、
確かに私と別れたあと、意識的に彼らを避けていたから誰と付き合ったとか何も知らない訳で
キュッと思わず強く侑の袖を握ってしまう
なんで、私がこんな思いをする権利なんて無いのに
侑「…大丈夫やで」
「え、」
ポン、と優しく私の頭に手を置いてニコッと笑った
あ、その癖
侑「俺がその女の元カレやったとして、あんたに何の関係があるん？」
“ 侑「ほんまAは怖がりやなあ」 ”
私の大好きな侑の癖、
私が怖い時、泣きそうな時、
困ったように笑って優しく頭を撫でてくれた
「っ、」
侑「てゆうか、ホンマに俺彼女おった事ないんで。」
グイッと肩を抱き寄せられて、そのまま歩き出す
堺さんは追いかけてこなくて、只ひたすら続く暗い帰路を侑と辿った
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
「…家、ここ」
侑「ほーん、電気ついてないやん」
アパートの階段を上がって、鍵穴に鍵を差し込む
侑「親は？」
ガチャン、と右に捻った
「片親、今入院してるの」
侑「…ほーん」
「…入ってく？」
侑「……えっ」
「侑、家結構遠いし、今から帰ったら22時すぎると思うから…昨日の夜ご飯の残り食べてく…？」
言いながら脳内で自分に突っ込んでしまう
いや何言ってんの私、食べないでしょ今すぐ帰らせろ
いやいやいや待って？もう関わらないって決めたのになんか勝手についてきてもらってるし、
侑「…じゃあ、お邪魔します」
「あ、どうぞ…」
…入っちゃったじゃん、私
適当にソファに誘導させて、冷蔵庫のチキン南蛮を取り出す
病院のお母さんに、自炊してる写真を送れって言われて急いで作ったチキン南蛮
まともな料理をするのも久々だし、いつもこんなに食べてなかったからもう胃がキャパオーバーして食べれなかったのだ
コトン、と机に置けば携帯を弄っていた侑が勢いよくこちらを振り返る
キラキラした目でチキン南蛮を覗いて、席に着いて手を合わせた
侑「いただきます！」
パクっと食べて、満面の笑みで
侑「うっっっっま！！！！うま！！Aちゃん作ったん？！！天才すぎん！！？」
思わずわたしも、笑ってしまった
「ふはっ、大袈裟だなあ」
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作者名：イオリ | 作成日時：2020年8月12日 23時
