治くん ページ18
侑のよく分からないツッコミをスルーして、携帯を開く
そういえば全然LINE見てなかった、とアプリをタップすれば臣のトークが1番上にあった
“稲荷崎って、宮のいるとこだろ…”
「…遅いわあほ」
でもなんで、臣が知ってるんだろう
顔見知りかなにかかな…
治「Aちゃん」
「…治くん」
後ろから声をかけられて、振り向くと治くんが立っていた
その横には不貞腐れたのか机に突っ伏している侑がいる
治「ちょっとええ?」
「あ、うん」
こっち、と手招きされて後ろを着いていくように教室を出た
_______
治「いつ帰ってきたん?」
教室を出てすぐ横の階段の踊り場で、治くんは振り返った
「…この春、お母さんが倒れちゃったから、私が身の回りをしてあげなきゃいけんくなって」
治「なるほどなぁ…俺らがこの学校なの、知らんかったやろ」
「うん、知らなかった。もう関わらないって決めて引っ越したのに、帰ってきたらこの様やん
ほんま、つくづくついてへんなあ…」
あはは、と笑うのを治くんにじっと見つめられる
治「…あの後な、めちゃくちゃリハビリ頑張って今は普通にバレーできるように回復してん」
「…そうなんや、よかった」
治「何回も言うとるけどAちゃんのせいやないから
やから、また前みたいに_____」
「ごめん」
治くんが言いかけたところで、ピシャリとシャットアウトする
それ以上は言わせない、とでも言うように
「もう決めたんだ、あの夜。クリスマスの日。
これ以上の私がそばに居ると侑の幸せを奪っちゃうから、もう関わらないって」
じわ、と視界が滲む
なんで私が泣きそうになってるの?もう嫌だ
「じゃあ、授業始まるから」
ごめんね、と言ってそのまま歩き出した
治「あ、待っ、」
「うわ、」
トン、と誰かにぶつかって後ろに転けそうになるのを支えられる
いった、鼻潰れたんだけど
赤くなった鼻を撫でながら、顔を見上げた
倫「え、A?なんで泣いてんの」
「…倫、」
泣いてない、と手で目元を擦る
倫「だめ、擦ったら腫れるよ。保健室出保冷剤貰おう」
「ちょ、」
治「…角名?なんでAちゃんとおんの」
倫「それはこっちのセリフ。泣かせたの?」
治「…関係無いやろ、嫌がっとるやんか」
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作者名:イオリ | 作成日時:2020年8月12日 23時