隣の席のデカい人【黒尾鉄朗】

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試合が終わり研磨に小言を言われ、すみませんでしたと謝ることしかできない俺を見て夜久は爆笑していた。



夜久が後輩をいびりに行くと言って研磨を連れ出していたが、俺は喉が渇いたので自販機に向かう。




何にしようか決めかねていると、委員の仕事が一段落したらしい高瀬さんが俺の元へやってきた。




｢黒尾くん、お疲れ様！すごかった！！レシーブもだけど、特に最初のサーブ！！｣



興奮しながら彼女は試合の感想を伝えてくれる。




｢…アリガトウゴザイマス。最初のは、調子に乗りマシタ｣






…つい君にいいとこ見せたくなって、とか言ったらどんな反応するんだろうか。





少しの間自販機の前で話をしていると急に高瀬さんに好きな飲み物を聞かれ、俺は素直に炭酸と答えた。




すると彼女は俺が一番好きな炭酸飲料のボタンを押し、買ったばかりのそれを俺に向けた。





｢はい、この前のお礼と次の試合も頑張れのやつです｣






…なんか、今日やばくないか？



普段下ろしている髪を今日は結んでいる彼女の笑顔がいつにも増して輝いて見える。





これがギャップ萌えってやつか……？



いや、それはなんか違うな。




俺が一人で自問自答していると、何も反応がないのを不思議に思ったのか高瀬さんは俺の顔を覗き込む。




｢…もしもし、キャプテン？｣




最近は大抵席に座りながら話しているからあまり気にしないようにしていたが、こうして立って並ぶとやはり身長差が結構ある。



そうなると彼女は俺を見るとき意図せずとも上目遣いになるわけで。






…ちょっと今日はいつもより破壊力がエグいな。




｢…ん、サンキュ。良かったら次の試合も見に来てな｣



｢うん、もちろん｣




次も勝ってね、と拳を差し出す彼女に俺も思わず拳を合わせる。






頑張って余裕ぶってはいるが、彼女の小さな手に触れたことによって内心動揺しまくりである。





それを見かねてかはわからんが研磨が俺を呼びに来た。




じゃあまたな、と言って逃げるようにその場を離れる。









『…クロ、その顔なんとかして』



｢え、俺今どんな顔してんの｣



『…頑張って余裕ぶろうとしてるけど動揺が隠しきれてない顔』



｢全くその通りの感情なんです今｣





幼なじみに今の心境をドンピシャに当てられ、思わず先程彼女の手に触れた自分の拳を見る。









｢…元気百倍だわ｣





『いいから早く新しい顔に取り替えて、クロパンマン』

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