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「…ナワーブ、入るね」
キィ、と古びた重みのある扉の感触。
大丈夫か、さっき泣いたことがバレていないかと、何度も何度も部屋の前で顔を擦った。
「………なんで来たのお前」
包帯を手に足にぐるぐる巻にされ、不機嫌そうに呟いてくれた。
…ああ、良かった。もう話してくれないと思ってた。不機嫌そうでも呟きでも、声を聞けるだけでもう私の心の中にある重しは軽くなった。
「…私のせいで、ごめんねナワーブ」
「…んだよ、らしくねぇな。ああそうか、さっき泣いてたんだもんな?」
「…はっ!?なんでそれ知って…………」
「え、まじで泣いてたの?カマかけただけなんだけどなぁ!」
ケタケタと笑い飛ばしてベッドに横になる。
「…いやぁ、まさかあの時瞬間移動するとは誰も思わなんだ」
「……ごめん、ごめんねナワーブ」
「○○が謝る必要はねぇよ。トレイシーを守るために庇ったんだからな…で、2人の怪我とか様子はどうだった?」
「えと、トレイシーは案外軽い怪我で済んだみたい。で、エミリーは既に高速回復したみたいよ、鎮痛剤打って飲んで。もう晩御飯の支度に取り掛かってる」
エミリーだってナワーブの所に来たかったに違いないと思うけど、しょうがないよな。
「…ふーん、ああ、そうか。」
「…自分から聞いた割にはつまんなそうな返事ね」
はらりとふたまきされた包帯を解く。
ナワーブのことだから特に意味は無いんだろうけど。
「○○さ、イソップに会ったろ。」
「……………あ、……………会ってない」
「いや、絶対会った。ぜーったい会ったね。これからの人生賭けてでも言える」
「…………………………うん、会った…けど、それが何かした?」
「あのさ、お前より先に飛ばされて戻ってきて治療された後、イソップと会ったんだよね」
「…はぁ」
で、心配してくれてさ?だけど、なんか宣告されたんだよな と笑みを浮かべるナワーブは、心底嬉しそうに顔を綻ばせていた。
「今まで○○さんを守るのはナワーブ君、だと思ってましたってさ」
「…○○を守る…私も守ろうとするつもりがいつの間にか守られてたって時がいっぱいあるね」
「けど_________おっと、王子様のお出ましだぜ」
ナワーブの指さす方を見ると、ドアの隙間からイソップ君の影が見えた。
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めんへらうさぎ(プロフ) - 今日初めて読んだのですが、すっごく好きです……。奥手なナワーブくん可愛すぎるし、ちょいちょいとおちょくってくるイライくんも可愛かったです…!イソペも可愛くて、とてもいい作品をありがとうございました(><) (2019年7月16日 22時) (レス) id: 9158c232db (このIDを非表示/違反報告)
ゆーな(プロフ) - 名前変えても○○になってます… (2019年6月18日 21時) (レス) id: 1ac6299c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:5号機ちゃん | 作成日時:2019年6月14日 22時