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3夜 ページ3

1週間後、敦くんは就寝時間になっても部屋に帰ってこなかった。

心配して他の人に聞くと、よくある事だと言われた。
園長先生に連れていかれているという噂もあった。


その夜、あまり寝付けないでいると、不意に扉が開き敦くんが帰ってきた。

少し眩しかったけど、アザだらけの細い腕が目に入った。


「…けが。なんで?」


そう聞くと、敦くんの目に狼狽の表情が走る。


「…折檻、された」

やっぱり不明瞭な声だけど、ちゃんと僕の耳に届いた。


せっかん。
それが何かわからなかったけど、心がざわざわしたのを覚えてる。


「痛くないの?」

「すごく痛い」


敦くんは、間髪入れずに答えた。
その割に目は涙で滲んではいなかった。


「痛いの痛いの飛んでいけー」


ひどく落ち着かない気分になったので、母さんが僕にやってくれたように敦くんの傷を撫でた。

そうして繰り返し3回言ったら、僕は母さんの声を忘れ始めていることに気づいた。



だんだんと鼻は痺れてきて、熱い涙が溢れでてきた。拭う間も無く、床に滴り落ちる。
自分が最高に情けなかった。


「…飛んで行った?」


震えた鼻声で聞いたら、何故か敦くんまで泣いていた。


「すごく、痛い」

敦くんの心の闇が垣間見えた瞬間だった。
痛くても泣けないくらい、恐怖にすくんでるんだろうか。

何があって泣いたのか、お互い今もわからない。


誰に憚ることもなく泣き続けた夜だった。

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太宰LOVE(プロフ) - 続き楽しみ 頑張って下さい (2017年5月29日 16時) (レス) id: d0ae358db4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠羽 - すいません!消えて仕舞ったLethe dianaの方を作り直しました!気が向いたら来てください!パスは同じです! (2017年4月19日 20時) (レス) id: 0df0e9c2a0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年3月27日 18時

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