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「赤葦はさー、高校どこ行く?」
寒そうに手を擦りながら、井上が言った。
「梟谷かな。」
すると、マジマジとオレを見て
「そっかぁ。私もそこにしようかな。」
…えっ
「赤葦と同じところ!」
うまく声がでない。
「な…なんで?」
一瞬、悲しそうな目をして
井上はいつもの笑顔に戻った。
「赤葦ってさ。」
オレと井上以外の時間が、
止まってしまったかのように思えた。
「なんか、全部がつまんなさそうだよね。」
初めて言われた。
実際、全てがつまらなかったが
それを指摘されたのは初めてだった。
「井上は…いつも楽しそうだね。」
ヘヘッと笑い、
「そうかなぁ?そう見える?」
「そうしか見えない。」
いきなり、井上は立ち止まり
「赤葦は、もっと楽しまなきゃ!」
よく通る声で言った。
「赤葦、こっち向いてよ!」
言われた通りに、ゆっくり振り向くと
__ボフッ
首に、何かが掛かった。
…井上のマフラー?
「それあげる!受験がんばろーね!」
じゃあね、と井上は走り去ってしまった。
マフラーは、ほんのり温かかった。
春は飽きずにやってきて、オレは高校生になった。
梟谷に来て真っ先に井上を探した。
_____あいつ落ちたりしてないだろうな。
「赤葦!やったね!」
後ろから井上の声がした。
フフッと笑い、
「お、な、じ、ク、ラ、ス!2組だったよ!」
案の定、隣同士だった。
また戻って来た、色付いた日常。
バレー部でも、
「なになに!お前セッターなの!?オレにちょっと上げてくれよ!」
性格が井上似の、木兎さんと会った。
毎日が充実して楽しく感じた。
7月くらいの時だった。
課題を教室に忘れたので、
取りに行こうとした時だった。
「…っ。」
井上?
よく見えなかったけど、もしかして
泣いてる?
なんで?
帰宅部だからいつも真っ先に帰ってるだろ?
なんで、誰もいない教室で1人で泣いてるんだよ。
いつも笑っている井上の泣く姿は衝撃的すぎて、
オレは、逃げてしまった。
…部活に行こう。
次の日の井上は、何も変わってはいなかった。
「おはよー!赤葦!」
いつもの笑顔で、
いつもの井上だった。
きっと…あれは井上じゃなくて、
他のだれかだったんだろう。
そう思うことにした。
大丈夫。
何も変わらない。
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「34点!」
「高校でも変わらないんだな。」
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ソーダ - うわああああ!赤葦くんの透明アンサー最高でした!!貰い泣きしそうでしたああああ! (2016年9月24日 19時) (レス) id: 93a07fca40 (このIDを非表示/違反報告)
霧兎(むう)(プロフ) - 夕陽さん» ありがとうございます! (2016年9月19日 10時) (レス) id: 0a87c5dd6c (このIDを非表示/違反報告)
夕陽(プロフ) - 霧兎(むう)さん» 了解です! (2016年9月19日 9時) (レス) id: e39b122cf2 (このIDを非表示/違反報告)
霧兎(むう)(プロフ) - 夢主は無しの友情系です! (2016年9月19日 9時) (レス) id: 0a87c5dd6c (このIDを非表示/違反報告)
夕陽(プロフ) - 霧兎(むう)さん» 夢主さんもありでいいですか? (2016年9月19日 9時) (レス) id: e39b122cf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夕陽 | 作成日時:2016年9月19日 9時