お隣さん諸事情により【まふまふ】 (ページ20)

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19 笑顔でずっとページ20

そらるside

あの日ほど、自分が無力だと思った事はない

Aが苦しんでいると気づいたあの日

俺はAを守ろうと思った

たった1人の妹を、

笑顔にするために

少し変だなと思い始めたのは俺が小学校高学年の頃

まだAは幼稚園児だった

誰が見ても、Aは他の幼稚園児よりも大人びて見えた

決して笑わないし、目はいつも伏し目がちで

簡単に言うと近寄り難い、そんな雰囲気だった

でも、それがいつもと言う訳ではなくて

母親と一緒にいる時だけ、Aは真っ暗なところにいるみたいだった

父親は、母親の言いなりだった

Aがボロボロの服を着ていても隠れて何かをすることも無く、ただなんにも言わずに仕事に行っていた

気づいたのは、俺が大学生の時

Aは高校に上がる歳だった

母親はAが帰ってこないのを、何とも思わず俺の夕食を作って一緒に食べる

しまいには、『帰ってこないほうが楽ね』なんて言うもんだから俺は外に出てAを探した

Aを見つけたのはコンビニの前

うずくまって、服は結構前に俺がバイト代で買ったものを着ていた

そ『A、帰、』

『帰らない...』

そ『心配してるぞ、皆』

『...皆って誰。お母さんに愛されてる彼方が私は嫌

い』

そ『...A、』

『気やすく名前を呼ばないで』

俺とAの間には大きな壁があるのを初めて知った気分で

俺はAの隣に座った

雨が降り始めても、俺達はただ雨を眺め、濡れることを気にもとめなかった

父親に問い詰めたら、やっとAの味方になって、母親と離婚をした

それから3人で楽しく暮らしていくものだと思ってた

たった5年

長くなんてない

今までAが苦しんできたのと比べたら

たった5年で、2人暮らしになった...

父親が、いなくなった日から

またAは

人を恨みたくなくても恨んだしまったAを見ていられなかった

坂田を、恨む気持ちが少しは俺にも分かった

だからもう

あの笑顔のままでいてほしい

Aを苦しめたくなんかない