抗うヒーローは。 ページ5
「失礼する。」
A組の担任の.......相澤先生？が入ってきた。
「雪城はいるか。」
「.......ﾁｯ。」
さっきまで和やかに会話をしていた雪城が突如顔を歪めて嫌悪感を顕にした。
余程嫌いなのだろうか、そんな風に感じた。
でも、次の相澤先生の言葉でそれは全て裏切られる事になる。
「雪城、今からでもいい。ヒーロー科への転科を考えみないか？」
ヒーロー科への転科？
何を言っている、こいつは無個性だって.......いや、それが嘘なのだと気づくまでにそう時間はかからなかった。
「やですよ。馬鹿な妹がいるところになんて行きません。ヒーローになる気もないですねぇ。それに、ヒーロー科の件は以前お断りしました。」
「だがしかし、お前の個性は.......。」
「私は無個性です。」
ここまでくれば、はっきりとする。
それが紛れもない嘘だって事が。
でもそいつは、無個性だと主張し続ける。
「.......わかった、また来る。ここで言い争いをしても合理性に欠くからな。」
そう言い残して教室から出てった相澤先生を見て、少しだけ満足そうな顔をする雪城。
でも俺は、嘘をつかれた事がなんとなく腹立たしかった。
「お前、無個性じゃないのか。」
「.......無個性だよ。戸籍上はねぇ。」
戸籍上？
親の勘違いかなんかか？
「どんな、個性なんだ？」
「完全再現。」
一言そう告げて、つまらなさそうに長い綺麗な髪をいじり出す。
虚無に近いその瞳は、本当にどうでもいいことらしい、というのを体現しているみたいだった。
「そんな強そうな個性を持ってて、ヒーロー科から推薦も来てて、それをヒーローになりたくないから断った？ふっざけんな。」
でも反対に、俺の怒りは増幅していった。
入りたくても入れなかった、俺への当てつけに感じたからだ。
「君に、何がわかるのかねぇ。所詮君も、そこら辺のつまらない人間と同じなのかねぇ。」
「俺は、ヒーローになりたいんだ！お前みたいに、無気力でどうでもいいやつに推薦が来てることに腹が立ってる！お前みたいなやつに、そんないい個性が宿ってることに腹が立つ！だったらせめて、ヒーローになりたいって言ってくれよ！」
この時は、俺も何を言ってるのかわからなかった。
ただ覚えているのは、感情任せに色々言ったことと、冷めきった雪城の瞳だけだった。
「ハッ、こんな個性くれてやりたいよ。」
それだけ言うと、雪城は出ていった。
俺もそれから数日は腹が立って関わろうと思わなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 242人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨水無月(プロフ) - にゃんぱすさん» ありがとうございます！好きって言って頂けて嬉しいです！これからもよろしくお願いします！ (2018年12月31日 10時) (
レス) id: 6950f1f86c (このIDを非表示/違反報告)
にゃんぱす - この小説とても好きです (2018年12月30日 23時) (レス) id: ac528e5cb0 (このIDを非表示/違反報告)
雨水無月(プロフ) - みみんさん» つまったではなく、なじったですね。コメントありがとうございます！ (2018年12月23日 10時) (レス) id: 6950f1f86c (このIDを非表示/違反報告)
みみん - 「詰った」って「詰まった」じゃないんですか？ (2018年12月22日 23時) (レス) id: 8ad0049e30 (このIDを非表示/違反報告)
雨水無月(プロフ) - KAREN(´･ω･｀)さん» コメントありがとうございます！神小説だなんて、嬉しいです！！これからも更新頑張りますので、応援よろしくお願いします！ (2018年12月19日 19時) (レス) id: 6950f1f86c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨水無月 | 作成日時：2018年8月11日 22時
