ヒーローがログインしました！season4【歌い手】

ヒロイン！１４７ ページ8

天月を見ていると、どうしたって特別部隊になる前を思い出す。

別に苦しかったわけでも、なんでもなかった…少し前の話。ぬるま湯の中でぼうっとしてるみたいな、手応えのない、沼に埋まってくだけの毎日。

私を引き取ってくれた叔母さんは優しい人だった。叔母さんの家族も良い人だった。

凪月は、私たちを見て『変なの』と言った。私にはその意味が全くわからなかった。

両親がいないことも、家事をほとんどやることも、誰かとご飯を食べられないことも、全部全部普通のことだと思って疑わなかったから。

それが不幸だって思ったことも、当然なかったし。

だけど、一回だけ。叔母さんに、私の両親のことを聞いたことがある。

叔母さんは、急に何？みたいな探るような視線を向けた後、『残酷な人だったわよ。』とだけ答えてくれた。

その言葉に別に苛立ちとかは感じなかった。実の両親に冷たいかもしれないけど、記憶の中にいない人を悪く言われて怒るような聖人君子なんかじゃなかったから。

そういえば、私が学校でなんか知らないけど気を失ったことがあって…その時、叔母さんはなにか怯えるような顔をしていたな。

そのあと、凪月がなんかやけに優しかったの覚えてる。

しかもなんか、あれだったな。『僕のこと殺したら世界が平和になるって言われたら、Aは僕のこと殺せる？』って聞かれたこともあったな。

なんて答えたんだっけ。たぶん、『殺して欲しいなら。』とか言った気がするけど。どうだったかな。

思えば、あの時にはもう凪月は『人を殺して手に入れる平和』を恨んでいたのかもしれない。

ヒロイン！１４８→←ヒロイン！１４６ まふまふside

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す