ヒーローがログインしました！season2【歌い手】

ヒロイン！６７ うらたside ページ21

「うらたさん、あったかいです。」

きゅ、と握った右手が、そっと握り返された。

『あったかい』ってその一言が、なんかわかんないけどものすごく嬉しくて涙が出た。

う「…あたりまえだろ。無茶しやがって。」

なぜかそのとき、やっと帰ってこれたんだって気分になった。

みんなで、ちゃんと生きて帰ってこれたんだ。

よかった、よかったって。

「心配かけて、すみませんでした。」

ここから見えるヴァンプの横顔は、やっぱり無表情だったけど。

微かに口元に浮かんだ笑顔を、俺は見逃さなかった。

ほんとにこいつ、表情作るのヘッタクソだなぁ。

う「次、目見るから解くよ。」

ヴァンプの右目を覆っていた包帯をシュルシュルと解くと、綺麗な紫色の瞳が現れた。

…後天性虹彩異色症だ。

虹彩に何らかの影響が及ぶことにより、左右の目の色が変わってしまう病気。

ヴァンプの場合、撃たれたり頭を強く打ったりしたせいで虹彩に影響が出てしまったらしい。

まぁでも紫といっても、暗いところならちゃんと黒に見える。暗いところなら。まぁ、大して騒ぐような症状ではない。

う「と、言うことで瞳の色が左右違くなってしまったけど、視力には特に影響はない？」

鏡を見せながら虹彩異色症のことについて説明をした。

なんか昔は内科とか眼科とか別れてたらしいけど、今は自動施術師はヒトの体にまつわる全てのことができるから便利だよね。

ヴァンプに視力検査をして見るときちんと見えていそうだったのでよかった。

「うらたさん、眼帯とかってありますか。」

一応怪我してた左脚が熱を持っていたので冷やしていると、ヴァンプが右目を抑えながら言った。

う「あるけど、なんで？」

顔周辺にできた傷は人工皮膚貼って完治してるし、目だってめっちゃ綺麗な色だから隠す必要ないのに。

ヴァンプは不安そうに視線を彷徨わせた後、姫に向けるような顔でにこっと笑って

「片目の色違うと、姫さんに絡まれそうなので。」

その笑顔は、なんでかわからないけど泣いてるように見えた。

ヒロイン！６８→←ヒロイン！６６

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す